【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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14: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/06/14(金) 00:56:15.41 ID:DTY4fa360

 ちょうど自分の何メートルか前を、背の高い女性が歩いていた。

 彼女も飲んでいたのだろうか。それとも帰りだろうか。
 それだけなら別になんてことのない光景なのだが、場所が場所で、つい釘付けになってしまう。


 彼女は、橋の欄干の上を歩いている。


 バランスを取るでもなく、自分のペースで、ゆらり、くらり。
 高いヒールでふらつく様子も見せず、舞うように足を進める。
 
 危ないですよと言おうとした。
 けどその歩みがとても自由な感じがして、邪魔をするのが憚られた。
 アッシュグリーンのグラデーションボブが動きに応じてふわふわ揺れている。

 彼女の纏う空気は独特だった。

 酒精に浮かされた花びらのように、見え隠れする耳がほんのり赤い。
 見ている前で片足立ちになり、ヒール一本を軸にその場でくるりと回った。


 その一瞬、月明かりに照らされる細面がこちらを向いた。




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