静香千早「「アライブファクター」」 【ミリマス】
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28: ◆0NR3cF8wDM[saga]
2019/06/30(日) 00:44:03.52 ID:+e3phmGi0


 間奏が終わり、今度の歌いだしは、千早。
 直前、横目に静香を見やってから、

 ――とん、と千早が翔んだ。

 そうして、抑えきれない激情を無理やり押し留めるように、深く着地をする。
 膝が地面に着きそうな程の低い体勢から、一度下げた頭を正面の客席へと向ける。

 顔つきが、違った。

 修羅のような、敵(かたき)を捉えた武人のような、おおよそアイドルには似つかわしくない獰猛な眼光。
 その第一声、第一音に、観客は――そして静香は、魂を掴まれるような衝撃を受けた。
 誰の記憶の千早にも無い、どこまでも荒々しく力強い歌声、いや、叫びだった。

 全方位へと向けられた刃が会場を切り裂いて、ざわめきさえも立ち消える。






 不器用なんだよな、あいつ。
 それが、千早ちゃんなりの優しさなんだよ。
 怖い人なの、千早さんは。

 ああ、確かに、あなたは――





 千早の歌声に誰もが声を飲み込んでしまった中で、

 しかし、静香は、

 同じく、雄叫びのような歌声で応えてみせた。


 千早の苛烈な一振りに対し、怯むことも無く果敢に噛み付いていく。
 あの千早が、遠い憧れだった如月千早が、形振り構わず静香に対している。そのことが、言葉にならない程嬉しかった。
 ぺろ、と唇を舐める。
 自然と、ギアが上がった。
 これ以上は無いと振り絞っていた歌声の、更に向こう側へ。
 引かない。
 負けたくない。
 私の本気で、あの人に――




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