【ミリマス】さかしまの欠片
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10: ◆u/54BSBlPw[sage saga]
2020/02/08(土) 19:36:22.99 ID:RvB9VQpu0
「風が、呼吸によって折り畳まれるさまを見ることができます」

「え?」

「光の指や、水滴に潜む昏い秤が見えます。
 エミリーさんのすがたに西日の螺旋のような輪郭が覆い被さって、色彩が循環する刹那を見ることができます」

「紬さんは、何をおっしゃっているのですか?」

「悪いことばかりではないということです。エミリーさん、私は大丈夫です。
 両親も分かってくれました。明後日から、みなさんと合流します」

紬さんは、こうも話を急ぐような喋り方をする人だっただろうか。
たとえ私でなくとも理解に時間を要するような発言を、こうも遠慮なく連ねる人だっただろうか。

紬さんは、あまりにも遠くの世界に行ってしまったように思えた。
私はできるだけ紬さんに共感しようと努力して、その途方も無さに歯噛みする。

身勝手な恐れだ。
そして、紬さんが劇場に戻って来るのなら、それは見ない振りをするしかない恐れでもあった。



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