20: ◆u/54BSBlPw[sage saga]
2020/02/08(土) 19:50:20.52 ID:RvB9VQpu0
だから、私は同じような声量で尋ねた。
「紬さんは、どうして……」
続く言葉を吐き出すことができたなら、誠実さを失わずに済むかもしれない。
でも、その答えを聞くことは、私にとって奈落に踏み出すほどの覚悟が要ることなのだ。
これ以上、紬さんを遠くに感じたくはなかった。
私の恐怖をよそに、紬さんは、きっと重く苦しい声を絞り上げた。
「エミリーさんには、分かっていただけるのではないかと思いますが」
その前置きが、微かな希望に思えた。
「ここで一瞬でも足を止めてしまうと、
もう二度と立ち上がることができないような気がするのです」
実態のない敵を見据えるようにして、紬さんの目が、水面に浮かぶ波紋のように揺れた。
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