もしもし、そこの加蓮さん。
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291:名無しNIPPER[saga]
2020/05/10(日) 23:41:11.48 ID:7gnP6kF90

そろそろ出なければ一限に間に合わなくなる時間でしたが、
そもそも今日は講義自体がありません。

部屋に戻った加蓮は最近買い替えたばかりの机に座ります。
ノートと教科書を広げ、通学用の鞄から図書館で借りてきた本を取り出しました。


加蓮は試験よりもレポートを好む学生でした。
時間のごく限られたペーパーテストとは違い、その気になれば幾らだって悩めますし、
何より知識を結び付けていく過程で新たな発見に出会ったりするのを、
彼女は楽しむ事が出来るのでした。


小一時間も進めるとおおよそのアウトラインが見えてきました。
凝り固まっていた身体を小さな伸びで解すと、
とうっ、と小さく叫んでベッドへのダイブを敢行します。

しばらくそのまま動かなくなったと思えば、二分後にようやくの再起動。
枕の下に手を突っ込み、古びた文庫本を引っ張り出します。


星新一著、『ようこそ地球さん』。
ふと読み直したくなって、今週に入ってから少しずつ栞を進めている一冊です。


三編も読むとちょうどいい時間でした。
窓を開けて春の陽気を確かめると、薄手のカーディガンを選んで羽織ります。

上機嫌そうに鼻歌を口ずさみながら、
加蓮は目をつぶったって辿り着ける事務所へと向かいました。


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