もしもし、そこの加蓮さん。
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30:名無しNIPPER[saga]
2020/04/27(月) 00:17:38.06 ID:Hmn4qVbR0

先程までは空席だった筈の椅子。
いつの間にか先ほどの男がそこへ座っていた事実に、加蓮はようやっと気が付きました。
それから聴覚情報の処理が始まって、ぎゅうっと胸が痛くなりました。

 「……あの、何ですか?」

 「アイドルになりませんか、と」

 「いえ、そうじゃなくて」

 「あ、はい」

 「…………何ですか?」

一息に紡げたのはそこまででした。
これ以上は声が震えてしまいそうで。
既に震えていたケチャップ色の指先を隠すように、コーラのカップを握りました。


有り得ない。
こんな夢物語みたいな。
御伽噺じゃあるまいし。


身体が真っ二つに分かれてしまったみたいでした。
熱に浮かされたかのように何事かを喚き立てる加蓮と、
膝を抱えながらそんな彼女へ冷めた視線を送るだけの加蓮と。
自分が一体何処に居るのか分からなくなり、彼女は黙り込んでしまいました。


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