貴音「ざ・りすと・おぶ・四条」
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1:名無しNIPPER[saga]
2020/04/26(日) 21:14:27.73 ID:e0wnwU/00
「これはどういうことなのでしょうか」

貴音はそう呟くと、ラッピングの丁寧な小袋を摘まんで振るのだけれど、空になっているそれは小さくカサカサとだけ音を鳴らすだけで、そこに入っていたクッキーを惜しむように貴音は目を向けながら、もう一度春香に向きなおすのであった。

「春香。わたくしは訊いております」

「えっと、その」

「昨日よりわたくしは楽しみにしておりました。春香、あなたがくっきぃを持ってくると言うので、わたくしは非常に楽しみにしておりました」

貴音はソファーに座る春香の隣へ音もなく座り、まるで子猫を撫でるかの様に膝上に小さなバスケット、正にクッキーが入っている、いや、入っていたが正しいのだけれども、その蓋をわざとらしく開けて中を春香に見せ付けながら、再び偉そうな口調を続ける。

「空ですね、おかしいですね」

「数、足りなくなっちゃったみたいで、その、早い人順に、しちゃって」

「早い者順、ですか」

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2:名無しNIPPER[saga]
2020/04/26(日) 21:15:30.98 ID:e0wnwU/00
依然としてバスケットを撫で愛でる貴音はすぅと半眼になりながら春香に詰め寄る姿勢は変わらず、空の袋を再び持ったと思えばわざとらしくくしゃりと握って続けて言葉を紡いだ。

「わたくしの分は避けておく、それは出来たはずですよ」

「そ、そうですけど、そんな特別扱いは」
以下略 AAS



3:名無しNIPPER[saga]
2020/04/26(日) 21:16:42.21 ID:e0wnwU/00
春香の名前を呟いた貴音は、ここからが問題なのであるが、どこからともなくというより背中の方から、白いバインダーを取り出してペンを握ったのであるが、このバインダーこそ、貴音が最近肌身離さず持ち歩いている『四条のリスト』であって、それを見た春香は途端に顔を青くして待ってください、貴音さんやめて、と懇願しながらすがり付いたのである。

「あなたはわたくしを失意の底へと蹴落としました」

「違うんです、わざとじゃないんです」
以下略 AAS



4:名無しNIPPER[saga]
2020/04/26(日) 21:17:37.60 ID:e0wnwU/00
最近の貴音の流行りというか、何か気に食わない事があるとあの『りすと』に相手の名前を書き込むのである。曰く、とても恐ろしい制裁があるらしいのだが、基本書かれたところで特に何が有る訳でも無い、にも関わらず、皆はその『りすと』入りする事を恐れ、ただただならないよう願うのである。

「わたくしも残念です。これで春香も『りすと』入りしてしまうとは」

「ひ、ひどい」
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[saga]
2020/04/26(日) 21:18:26.34 ID:e0wnwU/00
「響、あなたは先程からのこのやり取りを見ていましたよね」

「春香が可哀想だった」

「違います。可哀想なのは食べられず泣き寝入るしかないわたくしです。そして最後の一袋、全て食べてしまったのですか」
以下略 AAS



6:名無しNIPPER[saga]
2020/04/26(日) 21:21:52.81 ID:e0wnwU/00
ちはやちゃあああんと涙声で千早にすがり付く春香がこれまた可笑しくて笑いそうになっていると、いつの間にか隣に座っていた亜美が、彼女も先程迄のやりとりをずっと見ていた訳であるのだけれど、対面に置かれっぱなしになった『四条のリスト』を手に取りながら、これ名案とばかりに黒いマジックペンで、白いバインダーの背面に何やら書き込んでいく。

「これで亜美はお姫ちんに誉められて、リスト入りはもう絶対に無いっしょ」

むふむふバインダーの裏で笑う亜美が至極楽しそうなので、それはそれとして置いといてその後も談笑していると、本当にそこのコンビニだったのであろう貴音とあずささんが帰ってきて、亜美は飛び付くようにして貴音にバインダーを手渡した。
以下略 AAS



7:名無しNIPPER[saga]
2020/04/26(日) 21:23:07.30 ID:e0wnwU/00
「何ですか、このふざけた落書きは!!」

「えっ」

「この落書きは亜美なのですね」
以下略 AAS



8:名無しNIPPER[saga]
2020/04/26(日) 21:24:03.85 ID:e0wnwU/00
「響、『りすと』を見ていてください」

貴音はお花摘みに行くようでテーブルの上に『リスト』を置いていって行く訳だが、それを手にぺらぺらと捲りながら今日のものや過去の『リスト』入り事由を眺めていたのであるが、これまた今日は誰かが側に来る日なのか何なのか、美希がぬっと横から顔を出して、それ貸してと『リスト』を手に取って物置部屋へと消えていった。

そうして貴音は帰って来た訳なのだけれど、来るなりあの『リスト』が無いものだから、そわそわとテーブルの下を見たりソファーの裏を探した後に、疑念たっぷりに顔を歪めて自分に詰め寄るのである。
以下略 AAS



9:名無しNIPPER[saga]
2020/04/26(日) 21:25:26.03 ID:e0wnwU/00
「誰かと思えば、美希。これには失望致しましたよ」

「こんなくだらない『リスト』なんて今すぐやめるの」

「なりません。それは765ぷろを正しい道へと導く最善の方法なのです」
以下略 AAS



10:名無しNIPPER[saga]
2020/04/26(日) 21:26:33.52 ID:e0wnwU/00
「亜美、なんなの落書きって。あとまた響。それに真クンに春香。酷いの、横暴なの、ってあれ」

「美希、やめなさい」

「『三浦あずさ、わたくしを差し置いて春香のくっきぃを食べてしまった為。』だって」
以下略 AAS



11:名無しNIPPER[saga]
2020/04/26(日) 21:27:27.67 ID:e0wnwU/00
「なっ。み、美希、落ち着きなさい。止めるのです。なりません!!」

美希はペンを頭の上まで握り上げて、はたまた険しい顔を作りながら、貴音の今までのそれを真似するようにして言い放ったのである。

「貴音、あなたは『リスト』入りなの!!」
以下略 AAS



12:名無しNIPPER[saga]
2020/04/26(日) 21:28:33.62 ID:e0wnwU/00
「うわあん、あうあうあう!!」

酷いのです、みなが、765のみながいけずなのです、と貴音は言うのだけれど、ぴよ子だって同じ部屋に居たのだし今日の一部始終や今までのそれを見ているのだから、その言い方は果たしてとは思いつつ、大人なぴよ子は貴音をよしよしとあやしながら、みんな意地悪しちゃダメよ、なんて窘めていても、その笑いを堪える口は波打ち、脇腹をつねっているので大人はずるいと心から思ったのであった。

膝元には押し付けられた『リスト』があったので、自分も貴音と美希よろしく大袈裟なそれは取らないけれども、誰に聞こえる訳でもない小さな声で、自分はぽつりと呟くのである。
以下略 AAS



13:名無しNIPPER[saga]
2020/04/26(日) 21:29:53.87 ID:e0wnwU/00
ごめんなさい、お姫ちん
ごめんなさい、小鳥さん


14:名無しNIPPER[sage]
2020/04/27(月) 01:05:58.04 ID:UFS+1bqQo
You just made the list !!!


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