ロード・エルメロイU世「最初からそれがお望みだろう、レディ?」
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2:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/15(月) 22:33:34.97 ID:uimHEu7hO
「では、乾杯」
「有り難く、頂こう」

控え目に杯を掲げて、まずはひとくち。
豊潤な甘みが貴腐ワインの特徴である。
灰色カビ病にかかった葡萄が腐ることで、こうして糖分が凝縮し、香り高くなるのだ。
はちみつのようなとろける甘みが舌先の味蕾を通じて脳に幸福をもらたらしてくれる。

「ぷはーっ! マジで美味いな! これは!」
「こら、はしたないぞ」

おっと。ついはしゃいでしまった。
しかしながら、この場に敵はいない。
講師としては一流でも魔術師としては二流以下である義兄の前で取り繕う必要などない。

「ほら、我が兄よ。どんどん飲みたまえ」
「こういうものはもっと味わってだな……」
「いーから! 義妹の酒が飲めないのか!?」
「で、では、遠慮なく……」

注がれるがまま、義兄が飲み干す。
あまり酒に強くない我が兄はすぐ赤くなる。
それが面白くて、どんどん飲ませた。

すっかり酔っ払った義兄たる、ロード・エルメロイII世がくだを巻いて講義を始める。

「いいか、レディ。そも、魔術師とは……」
「根源を目指す者だろう?」
「たしかにそれが本質だ。しかしながら、それだけが存在理由ではない。でなければ根源に至るだけの才覚のない者、つまりボクみたいな落ちこぼれに存在理由はなくなる」
「では、我が兄は何を目指していると?」

酔っ払って義兄が面白くて戯言に付き合ってやると、彼は酒臭い息を吐きながら言った。

「それはつまり、ぷはぁー……覇道だ」
「ほほう? 覇道とは、大きく出たな」
「ああ、大きく出たとも。ボクは成るんだ! いずれあの征服王のような偉大な覇者に!」

まるで少年のように目を輝かせながら、覇道を語る義兄は愚かで、可愛らしかった。


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