高垣楓「あなたがいない」
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33: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/14(月) 21:12:28.09 ID:Od9IjqsH0

 そして到着した告別式、僧侶の読経が響く。中に入ると、驚くほど人がいなかった。
 小さな祭壇に、社長さんやちひろさんなど事務所スタッフ数名、それからおそらく、彼のお姉さん。
 両手で十分数えられる人数。私は茫然とした。
 お姉さんと思しき人は、私の顔を見てわずかに会釈した。
以下略 AAS



34: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/14(月) 21:13:13.56 ID:Od9IjqsH0

 収録へ戻る車の中。私は、臨時でマネジメントをしてくれているスタッフに話しかけた。

「本当に」
「……なんです? 楓さん」
以下略 AAS



35: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/14(月) 21:14:18.80 ID:Od9IjqsH0

 手帳を、開く。
 Pさんが残してくれた、私のスケジュール。それは半年先まで埋まっていた。
 もちろん、これから詳細を調整する必要があるものばかりだけれど、私たちアイドルのスケジュールをこれだけ埋めておけるというのは、やはりPさんの力量が並外れていることの証左と思う。
 カレンダーの後ろ、メモのところにはびっしりといろいろなアイディアや備忘録、彼の考え方や私のことなどで埋め尽くされていた。
以下略 AAS



36: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/14(月) 21:15:26.03 ID:Od9IjqsH0

 社長さんから、Pさんの後任の打診を受ける。Pさんの先輩で、プロデューサーとしての実力も確かな人だった。

「高垣さんには酷な話だと思っています。だが我々も万全の体制で、引き続き頑張っていきたいと考えています」
「……」
以下略 AAS



37: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/14(月) 21:16:08.17 ID:Od9IjqsH0

「……それは、P君のことが忘れられない、ということなのですかね?」

 社長さんが問う。

以下略 AAS



38: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/14(月) 21:17:13.10 ID:Od9IjqsH0

 わがままだということは十分分かっている。だがどうしてもこれだけは、譲れない。
 社長さんは手帳をテーブルに置くと、両手を組んで私に言った。

「高垣さんの想いは分かりました。ただ、それでもセルフでというのは、承諾できません」
以下略 AAS



39: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/14(月) 21:18:25.87 ID:Od9IjqsH0

 翌日。オフであった私に一本の電話が届く。チームの構成について打ち合わせをしたい、ということだった。
 私は早速事務所へ顔を出した。

「おはようございます」
以下略 AAS



40: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/14(月) 21:19:06.98 ID:Od9IjqsH0

「いえ、ありがとうございます。正直、ここまでしていただけると、私のプレッシャーが」
「いやいや、私たちのほうがプレッシャーですって。ほんと、お手柔らかに」

 私の言を受けて、プロデューサーが言う。少し、場の雰囲気が和らいだ。
以下略 AAS



41: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/14(月) 21:20:15.89 ID:Od9IjqsH0

 翌週から仕事の合間を縫って、ミーティングが開かれる。
 私がリーダーになったとは言え、企画からスケジュール管理まで行うのはチームの他のメンバー。
 私はアイディア出しとパフォーマンス、それを求められている。実際、仕事のスケジュールは半年先まではある程度埋まっている。そこは問題ない。

以下略 AAS



42: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/14(月) 21:21:11.65 ID:Od9IjqsH0

「そうですねえ……ホールはあまり大きくなくていいんです、と言うか、あまり大きくないほうがいいんですが。
私の肉声が聞こえるくらいの近さで、アコースティックなライブがやってみたいです」
「ああ、なるほど。アコースティックですか」

以下略 AAS



43: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/14(月) 21:21:58.43 ID:Od9IjqsH0

 プロデューサーのざっくりしたスケジュールに、私はゴーサインを出す。
 チームの道標は決まった。あとは詳細を詰めていく作業へ移る。
 チームが、事務所が、人々が、慌ただしく動いていく。私の新しいスケジュールは徐々に、密に埋まっていく。
 それが私にはありがたかった。
以下略 AAS



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