20:名無しNIPPER[saga]
2021/04/18(日) 01:58:02.19 ID:S9RXO5Th0
捨てたのではない。
『あの子』にとってそれは、捨てるにはあまりにも大きくて、大事なものだったから。
置いていったのではない。
いつか取りに戻るなんて言えるほど、その傷は小さくなかったから。
だから、忘れていった。
そうしなければ、『あの子』は救われなかった。
「こんな所にいたのね……」
私の手を掴む彼女の手にそっともう片方の手を重ねる。
この学園艦にはもう、彼女の残滓なんて残って無いと思っていた。
だけど、彼女はここにいた。
ずっとずっと後悔しながら。
ずっとずっと苦しみながら。
この学校を離れる前の『あの子』の一番最後の記憶。
最も辛くて、最も苦しかった瞬間。
その記憶から生まれた彼女は、ずっとずっと、その苦しみに苛まれて、なのに彼女のように忘れる事も出来ない。
後悔して、苦しんで、哀しんで。
そしてこれからもずっと、ここで過ぎ去った想い出に苛まれ苦しむのだろう。
それが彼女が産まれ落ちた理由だから。
………………そんなの、あんまりだわ。
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