【ガルパンSS】エリカ「彼女が望んだ忘れ物」
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22:名無しNIPPER[saga]
2021/04/18(日) 01:59:37.48 ID:S9RXO5Th0


「私の欲しいものを持っているあなたが妬ましかった」

努力と才能。

そんなありふれた格差に自分勝手に憤っていた。

「あなたがいる日々が嫌で嫌でしょうがなかった」

私を見て楽しそうに手を振る姿を見るたびに、人の気持ちも知らない癖にと苛立っていた。

「いっそあなたが消えてしまえば。そう思ってた」

それでも、あの子は毎朝、通学路で待っていた。

「だから『あの子』がここを去った日、清々したわ。私にはもう目障りなものは無いんだって」

それで、全部終わり。

私が私らしく私として頑張れる日々が来る。

それを嬉しく思った。

「―――そう思う事にした」


嫌な事もあった、辛い事もあった。

嫌った事も妬んだ事も消えてしまえと思った事も確かにあった。

だけど、それでも。

「あなたとの日々は私にとって嫌な事もあったけど。それでも……悪くない日々だったわ」

それだけじゃなかった。

敵わないと思っていても、それでも共に競い合う日々は私にとって確かに充実していた。

高い壁だからこそ越えたいと願い努力できた。

合間に挟まれる穏やかで呑気な時間に確かに癒されていた。

刺々しい私に、それでも付き合ってくれた。

私と、小梅と、あの子の三人で過ごした日々は……楽しかった。

通学路で待つあの子を見て、溜息と共に駆け足で近づいて行った。

「……やっと、思い出せた」

呟きに喜びと懐かしさと寂しさが綯い交ぜになる。

でも、それにいつまでも浸るわけにはいかない。

楽しくて、大切な日々だったけど、それはもう過去の事だから。

どれだけ望んでも、もう帰ってくる事はないのだから。

だから、この子をここに置いて行くわけにはいかない。

私は、緩んだ頬を引き締め、零れそうになる涙をぐっとこらえ、彼女を見つめる。


「あなたは、『彼女』が望んだ忘れもの」





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