速水奏「文、奏でる」【モバマスSS】
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26:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 21:40:00.99 ID:u50g9+A20


「しかしあれだねー、奇跡みたいに同期のみんなが揃ってるねー。あとはユッキーだけなんだけどー……」


 同期のもう一人はユッキーこと姫川友紀。野球とお酒が好きな元気な人で、同期組では最年長の二十歳だった。


「そういって〜実は〜?」


 思わせぶりにフレちゃんが入り口に目を向けたが、当然、そう都合よくやってくることはなく。


「なんで来ないの? どーしてだよカナデちゃん!」

「友紀とは待ち合わせ、してないからね」

「あ、そっか」


 納得したように、ポンとフレちゃんは手を打った。


「ではユッキーの代わりに、ニナちゃん。ユッキーの気持ちしるぶぷれ〜?」



「なんで二、三塁からゲッツーなんだよ〜!?」


 かわいい猫だった仁奈ちゃんは、途端に猫の球団のファンに様変わりしていた。

 ぽんぽんと、文香の膝を叩きながら――もちろん、とても優しくだ――オンオンと泣いていた。

 そういえば、仁奈ちゃんは最近友紀の家に別の子と一緒に泊まったと言っていた。たぶん、その時の実際に目撃した光景なのだろう。本当に何をやってるのか。私は心の中で小さく息をついた。

友紀はとてもいい人だけど、ちょっと……だらしない、色々と。

 だけど不思議と、そういうところも許せてしまう。

 自然体でいるのが似合う人なのだ。私とは大違い。


 自然体といえば、文香も。


 最近、文香が事務所で他の子と話す姿をよく見かけるようになった。きっかけは一緒にデビューした同期のおかげ。今まで存在していた微妙な距離は、同期という言葉によって容易く縮まった。フレちゃんはそうだし、友紀や仁奈ちゃんも。

 一度破られた幕は、その穴を中心に広がっていき、その他の子との交流も広がっていっていた。

 そのお陰か、文香も前よりも周りに柔らかな表情を見せることが多くなった。


 そのことは、素直に嬉しかった。






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