速水奏「文、奏でる」【モバマスSS】
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80:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 23:36:34.52 ID:u50g9+A20


「みんなで見てたんだけど、フミカちゃん、カナデちゃんに会いたいっていうからさ。でもまだ歩くの危なそうだし、そこでユッキーのひらめきです」

「あたしが椅子に乗せたまま連れてこうって。ほら、車いすみたいに!」


 それでここまで来たのか。慌ただしいステージ裏の中、椅子に乗った状態で運ばれてくる文香を想像して、ちょっと笑ってしまった。

 文香は、椅子から立ち上がった。「大丈夫?」と、フレちゃんが支えようとしたが、文香は一人でも問題ないと手振りで断った。

 文香が、私の前に立った。

 先ほどより、顔色が良くなっているようで、私は嬉しかった。



「奏さん、素敵でした、とても。まるで……おとぎ話の世界の……主役みたいでした」

「そうでしょ。私だって、出来るんだから。私だって……」


 突然、私は言葉に詰まってしまった。

 そのことになによりも、私が驚いてしまった。

 急に感情が喉の奥で詰まったようで。

 言葉の代わりに、涙があふれ出た。なんで泣いているのか、私だって分からなかった。



 そんな私を文香や、みんなが優しく見守ってくれていて、私はますます、涙が止まらなくなって。



 でもどうしてか、それが嫌じゃなかった。本当に。
 






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