11:名無しNIPPER[sage saga]
2023/01/07(土) 14:06:02.26 ID:FRtckmfc0
少しひんやりとする布団に身体をすべりこませ、頭まで毛布を持ち上げる。柔らかくて軽くて、どこか落ち着く匂いがする。すっと目を閉じると、ようやく張りつめていた身体が少しずつほぐれていく気がした。
「電気もう消す?」
「あっ、はい」
ぱちりと明かりが落とされ、その暗さに安心感をおぼえる。ひとりを踏まないように気を付けながら、郁代はそろそろと自分のベッドに辿り着く。もそもそと布団の上を歩く音、ぱふっとベッドに倒れる音。ひとりは毛布から少しだけ顔を出して、郁代の方をちらっと見てから、また顔を覆った。まだ闇に慣れていない目は表情までとらえることはできないが、そのシルエットを見るだけでも、なんだかほほえましい気持ちになった。
(友達のおうちに、お泊まり……)
心の中でずっと憧れていたイベントのひとつが叶ったことを、今更ながらに実感する。
このまま眠って、朝になったら、郁代と一緒に登校できる。自分の家から遠く離れた高校を選んだひとりは、こんな出来事を迎えられる日が来るとは微塵も思っていなかった。
だんだんと布団に自分の体温がこもりはじめ、温かくなっていく。縮こまっていた身体が、徐々に徐々に伸びていく。緊張で眠れるか心配だったが、想像以上に早くリラックスできていた。このぶんなら寝不足になることもないだろう。
「……」
目を閉じながら耳を澄まし、郁代の気配を探る。まだ眠りに落ちてはいないだろうが、衣擦れの音がもぞりとも聞こえてこないのが少し不思議だった。ベッドに倒れこんだ体勢のまま完全に寝落ちしてしまったのだろうか。
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