長門有希「言語だけが意思疎通のツールではない」
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2:名無しNIPPER[sage saga]
2023/08/20(日) 22:10:37.52 ID:UAoHbIzwO
「ん? 長門、どうかしたか?」

ある日、元文芸部室でたまたま長門と2人っきりになる機会があり、適当に本棚から見繕った本を流し読みしているとこちらへ向けられていた視線に気づき、俺がそう訊ねると。

「近くへ」
「近くに寄ればいいのか?」

頷かれて傍に寄るとシャツの裾を引かれた。

「なんだよ、どうしたんだ?」

引かれるがまま屈むと、丁度、椅子に座ったままの長門と目線の高さが合った。長門は何も言わなかった。ただ目と目が合っている。

「声が出なくなったのか?」
「違う」
「じゃあ、なんで黙ってるんだ?」
「言語だけが意思疎通のツールではない」

なんだそりゃ。この距離でジェスチャーゲームでもしようってのか? 俺が首を傾げていると、おもむろに長門が自分の唇を指差して。

「たとえば、キス」
「キス?」
「そう。キスもコミュニケーション」

そりゃ海の向こうではそうかも知れんが、ここは日本であり、そんなコミュニケーションは恋人同士じゃなければ成立しないぞ。

「そんなことはない」
「ためしたことでもあるのか?」
「ない。あなたが初めて」

なら尚更信憑性はないな。やれやれと嘆息。

「いつかそうやってコミュニケーションが取れる相手が出来るといいな」

頑張れよと長門の頭に手を置いたその瞬間。

「待って」
「え?」

突然立ち上がった長門に唇を塞がれて俺たちはキスをした。まるで時間が引き伸ばされたように一瞬にしてはやけに長く感じられた。


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