過去ログ - パイルドライバー
1- 20
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2011/06/26(日) 15:45:16.52 ID:BD9wf7ABo


「あ、そうだ、お菓子持ってきたの」
思い出したように紬は言ったが、実際は言い出すタイミングを見計らっていたらしく、胸の前で両手を合わせる仕草もどこかぎこちない。
肘掛けに備え付けのミニテーブルを出してクッキーとアイスティーを広げる。
早朝でまだ活発化していない胃に詰め食べ飲み干し、当てなく言葉が漂う。
その言葉のほとんどは低く唸る走音に紛れて互いに聞き取りにくい事が多く、適当に相槌を打ったり、話の内容もわからないまま笑って見せたりするだけだった。
どうにも声を張ろうという発想が出てこない。

そのうち紬の瞬きが鈍くなった。
ほっとした梓は「着いたら起こしますよ」と言って寝るのを促した。
他の常客がいなかったせいか、買ったばかりの靴のような身体に合わない感覚に梓は覆われた。
いかにも用意してもらったような空間。
空間に合わせた振舞いをしなければいけないような。
その中にあっていい加減に打たれた杭のように座らされている。
それを思うと、梓は何を話したところで無様になる気がして、正しい態度を模索しているうちに新幹線はどんどん進んでいってしまうのだった。

時折遮音壁が途切れて野山、田畑、街並みがそれぞれ朝日に照らされているのを見ることが出来たが、他人行儀の側から見ても何の感慨も湧かなかった。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
19Res/16.35 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice