393:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/02/26(日) 22:58:09.86 ID:GFjxftzi0
腰の曲がった老翁――――マタイ=リースは年甲斐もなく、悪戯っぽく笑った。
「わかっていないなローラ。その方が、ロマンがあるじゃないか」
「御年八〇いくつを数える髪の毛の抜けきった爺様が、どの口でロマンなどとほざくのかしらね」
「それにだな。私も、叶うことならもう一度彼に会いたいのだよ。一月前は火急の事態だったから、ろくに時間もとれなかった」
「時間? 何のための時間かしら」
「決まってるだろう。『お嬢さんを私にください』、と頭を下げるための時間だ」
「なっ!?」
年甲斐もなく頬を真紅に染めたローラが、弾かれたように立ち上がった。
周囲の大混乱が幸いしたというべきか、その常にない痴態に注意を払う者は誰もいなかった。
「な、ななな、なにを馬鹿なことを言っているのかしらこのクソジジイは!?」
「はっはっは。こんな枯れ木のようなジジイでも、心はまだまだ彼らのように若いということだ。愛しているよ、ローラ。実を言えば私は、一目見たときから君の美しさに心奪われて」
「わーっ!! わーわーわーっ!!!! 黙れ黙りなさい黙らっしゃいこのお馬鹿マタイぃぃぃ!!!」
注意を払う“者”は誰もいない。
ただ不幸なことに、ローラは己の立ち位置を失念していた。
「んんっ!? ま、眩し……」
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