過去ログ - ほむら「この話に最初からハッピーエンドなんて、ない」
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19:以下、VIPPERに代わりましてGUNMARがお送りします[saga]
2012/02/16(木) 00:35:19.83 ID:hAmAlqxK0
翌日、未明。
夜も更けて街は闇に包まれ、静寂が訪れる。
時折、表通りを走る車のエンジン音も届かない寂れたアパートの一室で、
カーテンを閉め切り、一条の光すら射さない闇の中にぼんやりと浮かぶ双眸。

ほむらは、自宅へと帰ってきた。
何処をどう通って、は覚えていない。
気がついたら自室に居た、という表現が正しいのかも知れない。
それくらい、地に足が着いていなかった。

夢だと思いたかった。信じたくなかった。
それでも、瞳を閉じると、二度と動かないまどかの横たわる姿が、瞼の裏に焼き付いてくるのだ。
だから今もこうして、必死に目を開いている。

悲しいことに、ほむらは人の死に慣れてきていた。
何度も同じ人間の死を目の当たりにすることで、ほむらの感性は環境に適応する為に、感情を殺し始めたのだ。
それを非難することなど、出来はしない。

だが、まどかにだけは冷徹になりきれなかった。
想いは溢れ、感情の奔流は涙腺を刺激して止め処なく零れ落ちる。
拭っても、拭っても。

喪った悲しみから、次の時間軸でのまどかを求めた。
しかし、ほむらの望みは敢え無く断たれた。
この世で最も愛する者を主観24時間以内に、異なる理由で二度喪うという、悲劇。
傷口に塩を塗り込まれる痛みに、ほむらの心は悲鳴を上げていた。

眠れない。
胸の内は波打ち、揺れ動き、穏やかな気持ちで休むことなど出来そうにない。
眠らない。
まどかの姿がフラッシュバックして、幾度も脳裏を掠めるから。

そうして微動だにせず、ささくれた畳の上で膝を抱えたまま、どれほどの時間が経ったのだろう。
涙も涸れ、頬には流れた跡が白い筋となって残る。
きっと酷い顔をしているのだろうな、とほむらは思う。

この世界は、とても理不尽だ。それを改めて思い知っただけだ。
だけど、とどうしても考えてしまう。考えずにはいられない。
何故、まどかが、と。

鹿目まどか。本人曰く、何も取り得が無い、誰の役にも立てない女の子。
ほむらにとっては、優しく、誰よりも優しく、押しは決して強くないが、誰かの為に勇気が出せる子。
命の恩人で、私に生きる意味を与えてくれた子。我が身を投げ打っても構わない、とさえ思わせてくれる子。
……これから一箇月以上、決して生きられない女の子。

ワルプルギスの夜を越えられない、ということは今までに何度もあった。
だから良い、というものでは決してないが、そこが最後にして最大の障害だというのは、承知の上だった。
ならば、今回は一体何だ?

まどかを救う道筋は、糸の様に細く頼りない一本道なのだ。
少しでも辿り間違えれば、まどかに明日はない。
でも、だからと言って。

「こんなことって……」

胸に痞えた悪感情もろとも吐き出す様に、ほむらはやっとそれだけの言葉を呟いた。
誰に言うでもなく、ただただ、遣り切れなさから口をついて出た一言。

虚を衝かれる形で、まどかを喪った。
余りにも唐突に。こんなにも呆気無く、まどかは死ぬ。
幸せとは、薄氷の上をそっと踏み歩く様なものなのだ。


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