過去ログ - ほむら「この話に最初からハッピーエンドなんて、ない」
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5:以下、VIPPERに代わりましてGUNMARがお送りします[saga]
2012/02/11(土) 17:54:34.29 ID:SSZUNYll0
時を遡ったほむらの行動パターンは幾つかあるのだが、転入してまどかとの接点が出来るまでは
キュゥべえがまどかに接触するのを、只管陰で妨害し続けるのが基本となっていた。
まどかの与り知らぬところで、非日常の世界へと彼女を巻き込まぬ為に、ほむらは奔走する。
コンタクトを取られなければ、それでいい。まどかと接点を得てからも、可能な限りはこの方法を続行する。

本当は、転入前に一芝居打つなりして、早期にまどかとの出逢いを無理なく済ませておけば、
まどかに張り付く口実が出来る上に、契約も未然に防ぎ易くなるのだが――。

首尾良く拳銃や弾薬などを調達し、盾に収納したほむらは、何事も無かった様に事務所を後にした。
そろそろ夕方か。陽が少しずつ傾き始めたのを背に感じながら、ほむらは人の群れを足早に抜ける。
大通りを横に逸れると、近未来的なデザインのショッピングモールが目に入る。
食材や日用品もこの際だから揃えておこうと、ほむらはアーチを潜った。


粗方生活に必要な物を買い揃え、自宅への道程をほむらは歩いていた。
太陽は既に傾き、街を紅色に染め上げ、何処も彼処も街は人の密度を増していた。
臨時のバーゲンセールに参加していた所為で、予定よりも帰りが遅くなっていたのだ。
主婦の潜在能力は、時として魔法少女を凌駕するのではないか。ほむらは大人の女の底力に戦々恐々としていた。

途中、はたと歩みが止まる。
気がつけば、先ほどの丁字路まで戻ってきていた。
この後の予定としては、左折してもう寄り道もせず帰宅し、片付けもそこそこに再び外出する手筈になっている。

目の前には、並木道がまっすぐに伸びている。
その道の先は、まどかの家に通じている。
ほむらはこの時、まどかに早く逢いたい、と思っていた。

ほむらは時間を遡り、一箇月前に戻ってきた直後だ。
つまるところ、ワルプルギスの夜を越えられず、前の時間軸のまどかを喪った直後だったということだ。
悲しくて、辛くて、心細くて。胸は張り裂け、破れた血袋からは体液がぼたぼたと零れ落ちていた。
だから一刻も早くまどかの姿を見て、安心したかった。

案じるのは、まどかの安否。
それこそが、ほむらの力の源。
まどかが生きているなら、私もまだ動ける。

――ほむらは、まどかの生を通して自分自身の生を実感していたのだ。

軽く嘆息して、ほむらは思い直す。
これ以上、予定に変更はない。帰宅が遅れれば、その分今後の行動にも支障が出るのだ。
名残惜しさを抑え込み、ほむらは帰途を今まで以上の早足で歩いた。


夜の街は、相変わらずで何も代わり映えがしなかった。
近年、急激に開発が進み高層ビルディングが連なる街並の夜景は、
ロマンティックなデートやイベントにはお誂え向きだが、ほむらの濁った眼には無機質な病室と大差なく映った。
心がささくれ立っているな、とほむらは自嘲する。

だがその荒んだ気持ちも、まどかの顔を一目見れば治まるに違いない。
目指すは鹿目家。そこで一頻りキュゥべえを警戒し、平穏に過ごしているかだけ確認すればいい。
まどかに覚られず、ただ陰から。
それでいい。

一人首肯して、夜の闇を駆け出す影。足取りは決して軽くはない。
またしてもまどかを護れなかったという悔悟の念は、今尚ほむらを責め苛んでいた。
その気持ちを振り払いたいが為の、疾走。
傷心を慰められたいが故の、まどかへの渇望。

祈りはいつしか、呪いへと変わる。
全てはまどかの為にと、思い詰めるほむらの心は、呪縛に囚われていた。

……ほむらには、もう時間が残されていないのかも知れない。


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