過去ログ - 上条「迎えに、来たよ」フィアンマ「…うん」
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3:てまわしおるごーる  ◆2/3UkhVg4u1D[saga]
2012/09/12(水) 00:44:56.19 ID:zLGd1hxm0


きぃ。
ブランコの軋む音。
一般的に嫌な音と分類されるはずのその音は、俺様のたった一人の友人を思い出させてくれる。

『きみ、なまえは?』
『…みはいる』
『そっか。おれはとうま』
『とうま? にほんじん?』
『うん』

黒い髪はツンツンとしていて、硬そうで。
目は丸く、顔立ちは男らしいもので。
少し日に焼けた肌は、いたく健康そうだった。
拙いイタリア語だけれど、会話するには充分。
おずおずと、といった様子で差し伸べられた小さな手。
彼がどのような少年か、一部のマスコミはどう知らせたか。

『不幸の根源』。

でも。
その時の俺様には、まるで救世主のように思えた。

『…なんでこんなところにいるんだ? もうくらいぞ』
『……おうち、かえっても…おかあさん、いないもん』
『…じゃあ、おれといっしょにごはんたべる?』
『え…いい、の?』

ブランコの両脇の鎖から手を離し。
差し伸べられているままだった右手を握ると、顔を真っ赤にしつつ、少年は頷いた。
女の子を放っておけるかよ、だか何だか呟いていたような気もする。
娼館で働いている俺様の母親は、家に居ないか、居ても、ストレス発散に俺様を殴るだけで。
あまりよくないことだとは何となしに察しつつも、そのまま手を引かれて歩いた。
到着した先はホテルで、そこには彼の父親が居た。
息子に友人が出来たということをいたく喜び、好きなものを食べさせてくれた。
優しい人だ、と思った。
日本で彼のことが取り沙汰され、一時避難としてイタリアにやってきた、と彼らは言う。
事実、そうだったのだろう、と今思い返しても、納得出来る。
どうか仲良くしてやってくれ、と彼の父親は遠慮がちに微笑んだ。
うん、と笑顔で頷いた。俺様にとっても、彼が最初の友達で…最後の友達だったから。


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