過去ログ - 上条「迎えに、来たよ」フィアンマ「…うん」
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『暑い夏の幕開け』
◆2/3UkhVg4u1D
[saga]
2012/09/12(水) 00:45:38.19 ID:zLGd1hxm0
楽しい楽しい夏休み。
一般学生にとってはそうだろう。
しかし、そう、実に残念な事に、私こと上条当麻は今日も今日とて補習であり。
補習に埋められた夏休みなど、もはや休みではない。
「夏期休暇は何処に行ったんですかもう…」
はー、とため息をつくと、更に暑さが増したような気がして憂鬱になる。
「不幸だー…ただいま…」
唯一マシなのは、今日ポストに手紙(エアメール)が入っていたことくらい。
イタリア語で綴られたそれは、『疫病神』と呼ばれた幼少期、たった一人友達で居てくれたヤツからのもの。
今はどちらかというと、友達以上恋人未満の文通友達。
どうしてイタリア語は出来るのに英語は出来るようにならないんだろ、と思いつつ、冷房スイッチオン。
相変わらず綺麗な封筒だ。年々綺麗になっていく字は、もう安定したようで。丁寧な字。少し、神経質っぽさが出てる。
冷房が効いてきて涼しくなってきた室内で、何となく神妙な気分になりながら、封筒を開ける。
…今頃どんな美人に育ってるんだろう、なんて思いながら。
お洒落な便箋には、イタリア語で丁寧に文章が綴られている。
そういえばもう十年近く文通してるな、と思いながら、のんびりと内容を眺めた。
和訳すると、こんな感じか。
『親愛なる当麻へ
お元気ですか。入院などしていませんか。
当麻は不幸体質でやたらと怪我をするので、心配です。
こちらは日に日に暑くなってきたので憂鬱です。
でも、まぁ、日本よりはマシかな。蒸さないから。
学校にはきちんと行けていますか。
友達が出来ていればいいけど…でも、出来てなくても、それはそれで…何でもないです。
こちらは相変わらず友達が出来ません。でも、当麻がいれば別にいいかな、なんて。
最近はよく野良猫に囲まれます。ちょっと暑いので勘弁して欲しい。
猫といえば、この間真っ黒な猫を見ました。
当麻にそっくりで、撫でようとしたんだけど、逃げられちゃった。
次は煮干しで釣ってみようかと思うんだけど、日本の猫じゃないし、厳しいだろうか。
これからますます暑くなると思うので、どうか体調にお気をつけて。
ミハイルより』
「…友達なら、心配要らないっての。ヤキモチか?」
思わず笑いそうになりながら、返事をどうするか考える。
毎日退屈してるみたいだけど、学校とかどうしてるんだろ。
何か面白い話題の方がいいかな。今は悩み事とか無いし。
「んー…」
ひとまず保留、とテーブルにそっと置いて、もう一つのメッセージに気がついた。
二度見たら気がつくように、仕込まれていた、可愛らしい告白。
『今年、逢いに来てくれたら嬉しいな。…まだ難しいかもしれないけど。でも、出来たら。…好きだよ、当麻。貴男に恋をしています』
自分も好きだと書く事を見越しての告白だろう、と思いつつ、上条は優しく笑む。
「…上条さんも好きですのことよ、ミハイル。……大好きだよ」
彼女が此処に居たならば、抱きしめていただろう。
そして、告白の返事を返したはずだ。
ベッドに横になる。
そして目を閉じながら、昔の事を思い返した。
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