過去ログ - 上条「迎えに、来たよ」フィアンマ「…うん」
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7:ぎしぎしとおとをたてて  ◆2/3UkhVg4u1D[saga]
2012/09/12(水) 00:46:28.66 ID:zLGd1hxm0


今でこそ不幸の避雷針なんて言われてそれなりに友達の居る俺だけど、昔は嫌われてばかりだった。
どうしてだか俺は不運で、何かと怪我をしたり、悪い事ばかりが起きた。
要するに、今でもそうだが、不幸を呼び寄せやすい体質ということだ。
最初は『疫病神』なんて呼ばれて、周りの子や大人が離れていっただけだったのに。
マスコミの目にとまって、大々的に不幸体質を広められて。
全部俺が悪いみたいに思われて、借金を負って苦しんでいるという人に刺された事もある、らしい。
あんまり覚えてないのは、怖くて痛かったから、なんだろうか。
あまりに酷いので、国外逃亡することに決めた俺は、父親の仕事についていく形で、イタリアに行った。
その時、イタリア語の勉強をしたのはいいけど、学校はどうにも怖くて、行けなかった。
父さんは仕事も兼ねてたから、ホテルを空ける時があって。
学校は怖いといってもあまりにも退屈だった俺は、外に出た。

夕暮れ時の公園、一人の女の子が、静かにブランコを漕いでいた。
赤い髪はさらさらとしていて、肩につく程度のセミロング。
瞳の色はオレンジがかった金色、顔立ちは可愛らしく。
日に焼けていない肌は、白色人種ということを除いても、真っ白で透けるような。
流暢なイタリア語は、鈴を鳴らしたかの様に可愛い声音。

『きみ、なまえは?』

恐る恐る問いかけると、その子は不思議そうな顔をして俺を見た後、答えてくれた。

『…みはいる』
『そっか。おれはとうま』
『とうま? にほんじん?』
『うん』

握手は友達の証だっけ、なんて思いつつ、そっと手を差し出した。
不幸が移りませんように、そんなことを心の底からお祈りしつつ。
段々日が暮れてきたのを感じ取りながら、問いかけた。

『…なんでこんなところにいるんだ? もうくらいぞ』
『……おうち、かえっても…おかあさん、いないもん』
『…じゃあ、おれといっしょにごはんたべる?』
『え…いい、の?』

その子はきょとんとしつつ長い睫毛を瞬かせ、はにかみながら俺の手を握った。
女の子に手を握られた、という事実で顔を真っ赤にする俺を見つめて、その子はくすくすと笑い。
あまり充分にご飯を食べさせてもらっていなかったのか、はたまた肉がつかないタイプなのか、彼女はいたく細かった。
折れそうな指だな、なんて思いつつ手を引いててくてくと歩き。
ホテルに着いて、父さんにいっぱいご飯を用意したけど、遠慮しているとかじゃなく、彼女はあまり食べなかった。
俺の優しい友達。本当の意味での、心優しいたった一人の親友。

今でもあの時の初恋の想いを胸に留めているというのは…誰にも、内緒だ。


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