過去ログ - ビッチ・2
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5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/02/15(金) 23:14:27.01 ID:kwCozKeOo

 博人が待つ車に戻ると、麻季は普段奈緒人と並んで座る後部座席ではなく助手席のドア
を開けて車内に入った。博人は運転席にぼんやりと座ったまま、半ば身体をねじるように
して後部座席のチャイルドシートで寝入ってしまった奈緒人をぼんやりと見つめていた。

「何で?」

「何でって?」

「何で親族席に鈴木先輩がいたの」

「・・・・・・とりあえず家に帰ろう。奈緒人も疲れて寝ちゃっているし」

「博人君は何か知っているんでしょ。何であたしに教えてくれないの。親友の玲菜のこと
なのに」

 助手席におさまったまま麻季は本格的に泣き出した。

「車を出すよ」

「奈緒って、奈緒って何で? 怜菜はいつ子どもを産んだの。何でその子は奈緒っていう
名前なの」

 博人は車中では何も喋らなかった。麻季が泣いたり悩んだりしているときには、いつも
彼女を気にして慰めてくれた彼とは全く別人のようだ。

 帰宅してから、目を覚ました奈緒人に食事をさせ、風呂に入れ、寝かしつけるいつもの
麻季の仕事は全て黙ったまま博人がした。その間、麻季は身動きせず着替えもしないまま
リビングのソファに座ったままだった。

「奈緒人は寝たよ」

 博人はそう言って麻季の向かい側に座った。博人が麻季の隣に座らないのは彼女の浮気
を知った日以来初めてだった。

「何か食べるなら用意するけど」

 麻季にはもう夕食の支度をする気力は残っていなかった。一応、彼女のことを気遣って
博人はそう言ったけど、彼自身も彼女の返事を期待している様子はなかった。

「君は鈴木先輩との浮気を僕に告白したとき鈴木先輩は独身だって言ってたけど、鈴木先
輩と怜菜さんが実は夫婦だったことは本当に知らなかったの?」

 このときあの声がまだ麻季の頭の中で響いた。



『知らなかったって言わないと。ここで知っていたなんて言ったら、君は本当に博人に捨
てられちゃうよ』

『先輩が独身でも既婚でもあたしが不倫したことに変わりはないよ・・・・・・』

『ばか。そんなことじゃない。怜菜のことを承知で彼女の夫と不倫したことを知られたら
まずいって言ってるのよ』

『あんたが唆したんでしょ!』

『今そんなことを言ってる場合じゃないでしょ』



「先輩は独身だと思ってた・・・・・・さっき知ってショックだった」

「そうか。じゃあ怜菜さんが鈴木先輩と離婚していたことも知らないだろうね」

「知らない」

「怜菜さんに子どもがいたことも?」

「さっき知った」

 離婚と子どもがいたことを麻季が知らなかったことだけは事実だった。


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