過去ログ - ビッチ・2
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7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/02/15(金) 23:16:14.10 ID:kwCozKeOo

 そのつらい告白を聞いて動揺した彼女の頭にようやくあの声が響いた。



『玲菜を救ってあげられなかった絶望に博人は悩んでいるんだね』

『今の彼は、鈴木先輩と麻季の浮気によって苦しんだ挙句、最愛の娘を残して死んだ玲菜
のことだけを考えているんだと思う。正直、君と先輩のことなどどうでもよくなちゃって
るみたい』



 麻季は泣き出した。いつもと違って泣き出した麻季を博人はぼんやりと見ているだけだ
った。まるで泣き出した彼女を通り越してその先にいる怜菜の幻影を追い求めているよう
に。

「何で怜菜はあたしを責めなかったの? 何であたしと博人君を復縁させたいと言ったの
よ。怜菜はあなたが好きだったんでしょ。あなたもそんな怜菜に惹かれていたんでしょ。
何で怜菜はあたしからあなたを奪おうとしなかったの。わかんないよ。あたしにはわかん
ない」

「さあ。もう彼女に聞くこともできないしね」

 博人は自分と怜菜のことを話し終えてしまうと、それ以上何も言おうとしなかった。麻
季の苦悩にすら無関心のようだった。



 それでも結局、博人は怜菜への想いを、麻季は先輩との過ちと怜菜を裏切った後悔を、
互いに告白しあい、その上でお互いに一からやり直す道を選んだのだ。ただ、正直に言え
ば奈緒人がいなかったとしたら二人がその道を選択したかどうかはわからなかった。

 博人は少しするとまた以前のように優しい夫に戻ったけれど、そんな彼の態度にもう麻
季は何の幻想も抱いてはいなかった。この家族が新婚時代や奈緒人が生まれた頃のような、
何の疑問もなかったあの頃に戻っていないことは明白だった。その原因はやはり怜菜にあ
ると麻季は考えた。浮気をした彼女を博人は許したのだけど、その許容自体は偽りではな
いと思う。そしてあのときやり直そうと言ってくれた博人の優しさも嘘ではなかったはずだ。

 そう考えて行くと、現在の家庭の破綻の原因は麻季の浮気ではなく怜菜が博人君に告白
めいたことを話したせいだ。麻季にはそうとしか考えられなくなっていた。心の声は結局
正しかったのだろう。怜菜にとっては夫である鈴木先輩と親友の麻季との浮気はつらいこ
とでもなんでもなかったのだ。怜菜にとってそれはチャンスそのものだった。その証拠に
怜菜は全く鈴木先輩を責めることをせず、博人を呼び出して自分の学生時代からの彼への
愛情を曝露したのだから。

 怜菜にとって誤算だったのは自らが死んでしまったことだった。怜菜が事故に遭わなか
ったとしたら、今頃麻季は博人に捨てられていたかもしれない。



『そうだろうね。怜菜は君と先輩がメールのやり取りをしているなんて余計なことを博人
に言いつけたんだしね』

『やっぱりそう思う?』

『うん。下手したら博人と怜菜は今頃再婚していたかもしれないよ。それで奈緒人と奈緒
を仲良く二人で育てていたかも』

 想像するだけで気が狂いそうなほどつらい話だった。


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