過去ログ - 七海「君と」罪木「彼女と」日向「彼女の恋」
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2: ◆A./pWd82aQ[saga]
2013/10/16(水) 19:44:23.24 ID:rl6CVVlao

日向「左右田、いるのか?」

 呼びかけても返答はない。静かに秋の風が吹き抜けるだけだ。コンクリートの継ぎ目に草が生えていて、野ざらしで置いてある机は錆び付いている。

 時の流れから忘れ去られたような場所。俺はこの場所が好きだった。特に、四方に広がる街の風景がいい。あの家の一軒一軒の下には、俺と同じなんの変哲もない人々の生活がある。それを思うと、とても心が安らぐのだ。

 誰も立候補者がおらず、なんとなくの投票で推薦された美化委員に、こんな役得があるとは思わなかった。鍵を持っているのは、屋上に備品を出し入れする美化委員と、天体観測をする天文部だけ。

 ……というのが建前だが、実は裏で幾つかの合鍵が作られているらしい。なぜならばこの屋上には、とある噂があるのだ。おかげで俺は、時々鍵を開けるように頼まれたりする。今日やって来たのも、左右田の依頼を受けたからだ。




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