過去ログ - 千秋「隠し味には、ありのままを」
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4:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/02/14(金) 22:22:36.41 ID:UFBD+olCo



「――っと、もうこんな時間か」
 かち、かち、という音に気がついたのは、およそ三十分後。
 夢の国に行っていた俺の意識を連れ戻したのは、永遠に鳴り続く時計の音であった。

 無論寝ていたのではないが、ついつい目の前の美味しさに舌鼓を打っている内に時間が駆け足で走っていったらしい。
 目の前の液晶画面には半分位で数字が途切れている表計算ファイルが表示されていた。
 これを完成させるのは、もうあと三十分はかかりそうか、という程だ。

 口にいれたチョコレートの味を脳に刻みながら作業を再開する。

 おおよそ素人がおいそれと作って渡せるようなレベルでないチョコレートも実は多い。
 定番の湯煎してから整形したチョコに始まり、ブラウニー、ショコラ、更にはチョコをねりこんだワッフルとバリエーションは豊かである。
 その上、いくら趣味と言ったって、チョコレートケーキを渡された日には今日という日を訝しんでも仕方ないぐらいだ。

 冷蔵庫に残ったチョコレートケーキは、明日の俺の朝食か、アイドルたちのおやつになるだろう。

 そうだ、いっそアイドル監修のケーキを狙ってみるのも良いかもしれない。

 バレンタインの仕事を任せるアイドルは多いが、お菓子類は未だ居ない。
 お菓子作りでファンの間で有名な子も居るのだからそこまで無理な話でもないはずだ。

 一旦そういう風なことを考えてしまうと、途端に液晶画面にメモ帳を浮き上がらせてしまう。
 気がつけば画面左には編集ファイルを、右の片隅にはメモ帳を分割して起動しており、ひたすら数字を打ち込んでいく傍ら時々メモ帳に浮気をしてしまっていた。

 案外深く考えないこういう時のほうが面白い案が出るものだ。
 考えるだけなら損はすまい、とアクティブをメモ帳に変更したその時。


 事務所の扉が開くという、鳴るはずのない音がなったのである。





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