過去ログ - 876花形歌舞伎『恋飛脚大和往来』 -SS速報VIP

過去ログ - 876花形歌舞伎『恋飛脚大和往来』

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1:ランバージャック
2014/03/07(金) 19:04:30.17 ID:z5mogCcF0
あらすじ:ここは大阪新町の廓にある井筒屋。飛脚問屋亀屋の養子、忠兵衛は恋仲の井筒屋の遊女梅川を身請けしようと手付金を払ったが、後金の算段がつかずその期日も過ぎてしまっていた。そこへ恋敵丹波屋八右衛門が梅川を身請けしようと横槍を入れる　＜封印切＞(ふういんきり)
出演

亀屋忠兵衛:サイネリア
傾城梅川:水谷絵理

阿波の大尽:桜井夢子
仲居おふさ:日高愛
槌屋治右衛門:尾崎玲子
井筒屋おえん:秋月涼

丹波屋八右衛門:水瀬伊織

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2:ランバージャック
2014/03/07(金) 19:19:15.47 ID:z5mogCcF0
夢子「おえん、おえん!」

涼「はい、何でございましょう?」

夢子「梅川に逢わせてほしいのよ。この前話しておいたじゃない」

3:ランバージャック
2014/03/07(金) 19:21:06.92 ID:z5mogCcF0
夢子「おお、梅川!さっきから待っていたのよ。ささ、早くこっちに来てお酌して頂戴」

涼「お大尽様、ここは店先でございます。せっかく梅川さんも来たので、どうぞ奥へお出でなされませ」

夢子「そうね、梅川が来たんだから、奥の座敷で飲もうかしら。さあ梅川、私と一緒に奥へ行きましょう」

4:ランバージャック
2014/03/07(金) 19:22:06.51 ID:z5mogCcF0
ネリア「……手付の日限も切れて、どの面下げて廓へ顔出し出来るか…でも、梅川に逢いたい逢いたいと思うていたところへ梅川の手紙、どうか首尾良う逢えはしないデスかね…でも今日は堂島の御屋敷へこの公金三百両をお届けしないと…でも梅川に逢いたい…でもお届けしないと…逢いたいけど…ここまで来たら逢わないほうが男じゃないデス!いや～鎌倉一の風流男、梶原源太はアタシのことデスかね～♪」

ネリア「おえんサン…おえんサン…」

涼「はいはい、何でございましょう…手だけ出して気味の悪い人…どなたですか?」

5:ランバージャック
2014/03/07(金) 19:27:35.55 ID:z5mogCcF0
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絵理「おえんさん…」

涼「梅川さん、暗いから気をつけて…ちょっとここで待っててな」

6:ランバージャック
2014/03/07(金) 19:29:02.45 ID:z5mogCcF0
涼「お話を」

ネリア「あ、アハハ、話でおますかいな…おえんサン、あなたにはいつも御厄介ばかりおかけして…」

涼「いえいえ、そんなことは…」

7:ランバージャック
2014/03/07(金) 19:30:50.05 ID:z5mogCcF0
涼「ばあ!」

えりすず「ひゃあ!!!」

ネリア「お、おえんサン!ビックリした…」

8:ランバージャック
2014/03/07(金) 19:34:27.95 ID:z5mogCcF0
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尾崎「おえん、おえん!」

涼「はい…あっ!これは治右衛門さん!今宵はえろう遅く来ましたな」

9:ランバージャック
2014/03/07(金) 19:36:23.91 ID:z5mogCcF0
伊織「治右衛門居るか!あっ、梅川も居るか!こりゃちょうどええ…治右衛門、約束の梅川の身請け金二百五十両、受け取りなさい!…何してんねん、早よ座布団出さんかい!」

愛「はいはい…」

伊織「相変わらず無愛想やな」

10:ランバージャック
2014/03/07(金) 19:38:05.94 ID:z5mogCcF0
伊織「頼まれた?ああ、その頼んだって奴はあのならず者の忠兵衛、なら忠の事やろ。あいつに頼まれたんやろ?あんな奴の言う事ほんまにしてたら、仕舞いにどえらい目に遭いまっせ!この前な、あいつが納めよった前金五十両、あれな店の金使いこみよったんや。ほんまやで!」

涼「は、八右衛門さん!さっきから黙って聞いてれば忠さんの悪口ばかり…あなたがどれだけ忠さんの悪口を言おうとも、忠さんはそんな男じゃない!それに忠さんがな、この廓へ入ると全ての人が忠さん忠さん、台所の鼠もチュウチュウと言います!それだけ忠さんは皆に好かれとります!」

11:ランバージャック
2014/03/07(金) 19:38:58.74 ID:z5mogCcF0
伊織「…何や今聞いてたら、鼠までもがチュウチュウ?当たり前や!鼠がニャアニャア鳴いたらこの首やるわい!それにな、私はお前らにいくら嫌われようとも好いてくれるもんがあんねん。何やと思う?…金や。それにな、あんな田舎のどん百姓の、肥取り百姓の倅の忠兵衛なんかより私みたいなお育ち柄の良い男のところへ来た方が良いと思うけどなあ」

ネリア「あ、あいつ…好き勝手言いやがってえ…もう我慢できない!!八右衛門!!」

伊織「忠兵衛!!」

12:ランバージャック
2014/03/07(金) 19:42:39.41 ID:z5mogCcF0
伊織「そんな怒らんでもええやないか…忠兵衛、今聞いてたらな、お前のところの親父さん、大和の大百姓って言ったな?」

ネリア「そうデス!」

伊織「それ、よその親父さん違うか?」

13:ランバージャック
2014/03/07(金) 19:44:04.19 ID:z5mogCcF0
ネリア「何であんたなんかに…ここに持ってると言うたらそれでええやないカ!」

伊織「ほんまに持ってんのかちょっと見せてえなあ～♪…見せられへんの?…ほんまは持って無いんやろ?嘘なんやろ?」

ネリア「な、なんで嘘つかんな…この手ちょっと貸してみ…それ、ここに固い物があるやろ?」

14:ランバージャック
2014/03/07(金) 19:44:48.45 ID:z5mogCcF0
ネリア「おい!ほんま、なんで石や瓦持って金や金や言わなならン?」

伊織「ほな出して見せたらええやないか!」

ネリア「触ったらわかるやろ!」

15:ランバージャック
2014/03/07(金) 19:45:42.37 ID:z5mogCcF0
伊織「そこまで言うなら…封切って見せてもらおうか」

ネリア「そ、それは…」

伊織「なんや出来んのか?ほんなら私から封切って見せてやるわ…おい見てみいな。小判というものはええ色してるなあ。これがほんまの山吹色!チンチロリ～ン!…大和の金もこんな色してまっか?」

16:ランバージャック
2014/03/07(金) 19:46:09.10 ID:z5mogCcF0
ネリア「はぁ…はぁ…あっ!?…あ…ああ…こ、公金の…封が…うう…ああああああああああああああ!!!見せてやる!!!見せてやる見せてやる!!!五十両!!!百両!!!」

伊織「え!?」

ネリア「ア、アタシだって…アタシだって持ってんのヤ!!!…よう、よう見とけヨ!!!百!!!五十!!!二百両!!!」

17:ランバージャック
2014/03/07(金) 19:48:10.01 ID:z5mogCcF0
伊織「……偉いもんや……それでこそ亀屋の若旦那、恐れ入りました…けれどもな忠兵衛、こりゃ友達のよしみじゃによって言うといたるがな…この金、お前の金なら良いがひょっとして味な金なら…この首!!」

ネリア「ひっ!」

伊織「…胴に付いてはいぬぞよ…ふふふ…」

18:ランバージャック
2014/03/07(金) 19:49:15.70 ID:z5mogCcF0
ネリア「治右衛門サン!こ、これが梅川の身請け金二百両デス!受け取ってくだサイ!」

尾崎「これはありがとうござります!では私は身請けの支度をしてまいりますのでこれで…忠兵衛殿、梅川をよろしくお願いいたします」

ネリア「ハ、ハイ!」

19:ランバージャック
2014/03/07(金) 19:49:50.32 ID:z5mogCcF0
絵理「忠さん…」

ネリア「梅川!今の内に!今の内に!」

絵理「ちゅ、忠さん!?…どうしたの?なんでそんなに急かすの?…わたしに訳を話して…」

20:ランバージャック
2014/03/07(金) 19:50:34.68 ID:z5mogCcF0
ネリア「梅川…梅川…あああああ!梅川!ごめんなサイ…ごめんなサイ…」

絵理「忠さん…良いの…わたし今、幸せ…」

涼「忠さん!外に出る許可が出ましたよ。これが西口の札です」

21:ランバージャック
2014/03/07(金) 19:51:21.87 ID:z5mogCcF0
ネリア「…おさんサン、これは少ないけど皆さんへの祝儀デス」

涼「こ、これはありがとうございます」

ネリア「治右衛門さんにもよろしゅう…」

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