1: ◆H/FrQlqtF.[saga]
2014/06/15(日) 09:23:22.30 ID:SCtLNYswo
親の仕事の都合で、引っ越すことが多かったウチはいつの間にか一人で殻に閉じこもるようになってたんやな。
もちろん、最初の頃は頑張って友達も作ってた。
けれど、仲良くなってさあこれからという時に神妙な面持ちのお母さんとお父さんから告げられる4文字。
『ごめんね』
ウチはその時いた友達と離れるのを嫌だとは思ったけど、それ以上に二人を困らせたくない気持ちもあって、一人隠れて声を殺して泣いてたっけ。
そんな繰り返しの日々で、人と接するのに疲れた……って言ってしまうのは言い訳になってしまうんかな?
ウチがエリチと出会ったのは、高校生の時。
その舞台になった音ノ木坂学院も、きっとウチにとっては華々しい三年間を飾る場所じゃなくて、一通過点に過ぎないんだろうなと思っとった。
エリちのインパクトは、ウチにとって本当に……『本当に』なんて言葉はちょっと陳腐に感じるくらい、それくらい大きかった。
真っ直ぐに人を見据える透き通った碧眼の女神さまみたいな見た目にも、ウチはどきっとした。
エリチをいつも後ろから見ていて、その不器用なまでの率直さに、どうしてか傍にいたいなって思った。
それなのに、こんなに好きだったのに、どうしてエリチはウチを置いていってしまうん――。
いや、悪いのはウチやな……全部ウチが悪い。ほんっと最悪で、最低やね……ウチ。
「エリチ……」
真っ暗な部屋の中でもう何回そうひとりごちたかわからない自分の滑稽さに、乾いた笑いがこみ上げた。
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2: ◆H/FrQlqtF.[saga]
2014/06/15(日) 09:26:02.13 ID:SCtLNYswo
春爛漫、桜の花びらが散り落ちる道。
新鮮な笑顔がウチら以外にも、あっちにも、こっちにも。
なんとなく予想はできてて、覚悟もしてたんやけど、案の定疲れてしまったなぁ。
3: ◆H/FrQlqtF.[saga]
2014/06/15(日) 09:27:08.16 ID:SCtLNYswo
「今日のご飯はなんにしようかしら?」
「エリチの手料理が食べたいなぁ」
「ええ、いいわよ」
4: ◆H/FrQlqtF.[saga]
2014/06/15(日) 09:28:56.35 ID:SCtLNYswo
スーパーを出るともう夕日がかなり傾いていた。
その反対側にはうっすらと白い月が雲一つ無い空に昇り始めていて幻想的な感じやった。
特に今日の月はいつもより大きいような。スーパームーンって言うんやっけ。
スピリチュアルやんな♪
5: ◆H/FrQlqtF.[saga]
2014/06/15(日) 09:30:32.74 ID:SCtLNYswo
「はぁ〜っ……」
テーブルの上に少し投げやり気味に荷物を置いた。
ドンっと音を立てて、その衝撃で荷物の中の何かが転がってカサッと音を立てる。
右手が急に軽くなって変な感覚。
6: ◆H/FrQlqtF.[saga]
2014/06/15(日) 09:31:12.87 ID:SCtLNYswo
あの時は純粋に、ただただ楽しくて、一瞬でライブが終わっちゃったのを今でもよく覚えてる。
その後みんなで思いっきり泣いたのはまた別のお話。
視線をテレビに戻そうと首を戻すと、エリチと目が合う。
なんや、エリチも考えてることはウチと同じやんな。
7: ◆H/FrQlqtF.[saga]
2014/06/15(日) 09:32:22.61 ID:SCtLNYswo
聞き慣れたフレーズと声がしたような……そう、ウチらと同い年とは思えないほどの幼児体型な……。
ソファから約3m先の四角い魔法の箱に映るのは……にこっち!?
「ええっ!?」
8: ◆H/FrQlqtF.[saga]
2014/06/15(日) 09:33:42.32 ID:SCtLNYswo
どうしても気になるっていってエリチは携帯電話を取り出して連絡先を開く。
や行の矢澤にこの5cm上空で、エリチの人差し指が震える……ってなんでやねん!
「いっ、いいいいま電話してもだ、大丈夫かしら!?」
9: ◆H/FrQlqtF.[saga]
2014/06/15(日) 09:34:56.71 ID:SCtLNYswo
部屋にはボルシチのいい香りが漂って、着々と食卓に3人分の色とりどりのおかずが並んで……。
「って……」
「ん?どうしたん?」
10: ◆H/FrQlqtF.[saga]
2014/06/15(日) 09:35:55.52 ID:SCtLNYswo
しばらくしてにこっちがやってきて。
「まずはおめでとう、にこ」
「おめでとさんっ!」
11: ◆H/FrQlqtF.[saga]
2014/06/15(日) 09:36:50.14 ID:SCtLNYswo
「どうしてアンタが泣くのよ!?」
「うっ……だって、にこの夢だったじゃない……アイドル。こんなに早く叶って……」
「絵里……」
12: ◆H/FrQlqtF.[saga]
2014/06/15(日) 09:38:31.72 ID:SCtLNYswo
ご飯を食べ終わったあとも、食器は流しに置いといて、話は髪一本分も途切れず続いた。
「それでアンタ達はどうなの?こんなラッブラブな愛の巣を構えちゃってさ〜?」
「なっ、からかうのはよしなさいよ。ねえ、希?」
13: ◆H/FrQlqtF.[saga]
2014/06/15(日) 09:39:54.30 ID:SCtLNYswo
「げっ、もうこんな時間じゃない!悪いけど、そろそろ帰らせてもらうわ」
「うん、にこっちも今日はありがとな〜」
「こっちこそ久々に話せて楽しかったわ。料理も美味しかったし」
14: ◆H/FrQlqtF.[saga]
2014/06/15(日) 09:40:42.24 ID:SCtLNYswo
「おやすみなさい、希」
「おやすみー、エリチ」
ベッドはダブルベッドで、ウチとエリチの二人用。
15: ◆H/FrQlqtF.[sage]
2014/06/15(日) 09:41:50.36 ID:SCtLNYswo
今回はここ迄。
早ければ週末に再開します。
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/06/15(日) 09:48:59.79 ID:pIzKluGNo
乙
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/06/15(日) 10:05:27.40 ID:HVSFN9bf0
週末……焦らすわねぇ
乙
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/06/15(日) 17:49:09.38 ID:c1KLcvgaO
ここから>>1の状態になっちゃうんですか…?(恍惚)
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