過去ログ - 有香「兄弟子Pとブラジリアンキック」
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1: ◆VsnC0Q.LCyza[saga]
2014/11/27(木) 15:47:36.28 ID:bV1oylx1o
「ハッ! セイッ! ……セイヤッ!」
目の前の相手をしっかり見据え、左右の突きから蹴りを放つ。
相手が同年代ならば女子どころか男子ですら容易に防げない3連撃を、その人はいとも容易く腕でガード。
続けざまに右足を振り上げ、膝を下向きになるまで内転させながら足を振り下ろす。
ブラジリアンキックと呼ばれる難度の高い大技がーー
「甘い」
決まりませんでした。
その人は避けるでもなく、防ぐでもなく、足首を掴むという防御の中では一番難しい方法を簡単にやってのけました。
「キャァァァァ!!」
そして、掴んだ足首を離すことなく、上へ持ち上げました。あたしは今、逆さ吊りです。

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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/27(木) 15:48:47.07 ID:bV1oylx1o



3: ◆VsnC0Q.LCyza[saga]
2014/11/27(木) 15:51:06.99 ID:bV1oylx1o
初めまして、あたしの名前は中野有香です。そしてここは、神誠道場という、とある流派の空手道場です。
「いつも言ってるだろ中野。30センチも背が違う相手にハイキックなんか通用しないからロー狙えって」
「あの……そろそろ下ろしてほしいのですが、兄さん」
あたしが兄さんと呼んだ男性は、未だにあたしを逆さ吊りにしたままです。
ちなみに、兄さんといっても血の繋がった兄ではありませんよ。
以下略



4: ◆VsnC0Q.LCyza[saga]
2014/11/27(木) 15:54:48.04 ID:bV1oylx1o
兄さんはとある漫画の影響で空手を始めたそうで、その漫画と同じことをしてみたかったそうです。
あ、ちなみに神誠道場は別に一子相伝の暗殺拳を伝授しているわけでもありませんし、こんな時代錯誤な兄弟弟子みたいなものなんてありません。
大人の人は普通にさん付けで名前を呼び合いますし、学校の部活でもないので理不尽な先輩後輩関係みたいなものもありません。
とてもクリーンな道場です。
「護身術やダイエット目的でやってる女性も多いしな。お前は違うけど」
以下略



5: ◆VsnC0Q.LCyza
2014/11/27(木) 15:56:15.85 ID:bV1oylx1o
「無理してブラジリアンやるなよ、お前柔軟性はあるけど、あれじゃ遅すぎだ」
「…………」
そう、あたしが足を掴まれたブラジリアンキックは、未完成なんです。
未熟な相手なら当たりますが、足を振り下ろすまでの動作がスムーズにいかないので、熟練者相手には遅すぎるのです。
「あたしは諦めません。必ず完成させて兄さんをダウンさせてやります」
以下略



6: ◆VsnC0Q.LCyza
2014/11/27(木) 15:57:29.35 ID:bV1oylx1o
入門当初、あたしと兄さんは一緒に稽古してましたが、年齢や男女の差もあり兄さんがすぐ強くなったので、別々のクラスに分けられました。
幼かったあたしはそれが悔しくて、暇を見つけては何度も何度も兄さんに挑みました。
いつからか、あたしと兄さんは全体の稽古が終わった後、師範が道場を閉めるまでのわずかな時間で組手をするのがお決まりです。
今のあたしはかなり強くなりました。全国大会の常連で、同世代の中ではちょっとした有名人なのです。でも、兄さんはもっと有名です。全国大会では表彰台の常連です。
あたしは、兄さんに一度も組手で勝ったことがありませんし、知名度でもボロ負けです。


7: ◆VsnC0Q.LCyza
2014/11/27(木) 15:58:50.60 ID:bV1oylx1o
「神誠道場? あのブラジリアンキックの人がいるとこだよね」
初めて会う空手関係者には、いつもこの台詞を言われます。
ブラジリアンキックは、兄さんの得意技であると同時に代名詞にもなっています。
高校生の頃にこの技を習得した兄さんは、全国大会で初優勝し一気に有名になりました。
あたしがブラジリアンキックにこだわる理由はここにあります。
以下略



8: ◆VsnC0Q.LCyza
2014/11/27(木) 16:00:12.46 ID:bV1oylx1o



9: ◆VsnC0Q.LCyza
2014/11/27(木) 16:00:50.81 ID:bV1oylx1o
「中野、俺4月から道場にあまり顔出せないと思う」
「…………」
道場からの帰り道、兄さんは唐突に告げてきました。
こうなることはわかっていました。兄さんは大学を卒業して、4月から就職します。
毎年この時期になると、進学や就職などで多くの人が道場をやめます。
以下略



10: ◆VsnC0Q.LCyza
2014/11/27(木) 16:02:50.84 ID:bV1oylx1o
「月謝は払っておくから、やめるわけじゃないんだが、正直どれくらい時間が取れるのかよくわからん」
「兄さんの就職先って、どんな会社なんですか?」
「それは秘密。そのうち教えてやるよ」
あたしが兄さんに就職先のことを聞くのは、これが初めてじゃありません。
兄さんは何故かこのことだけは絶対に教えてくれません。道場の人に聞いても、師範にすら言っていないそうです。
以下略



11: ◆VsnC0Q.LCyza[sage]
2014/11/27(木) 16:04:33.20 ID:bV1oylx1o
とりあえずここまで
今日の夜か明日またきます


12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/11/27(木) 17:51:51.80 ID:8TTs6DP2O
おつ期待

キャラの台詞の前後だけでも改行入れると読みやすくなるかも


13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/11/27(木) 21:13:46.37 ID:ClVHcifDO

押忍にゃんメインのSSは珍しい上に
プロローグから既に良さげな雰囲気が
漂っていて期待せざるを得ない


14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/11/27(木) 21:26:59.90 ID:ClVHcifDO

押忍にゃんメインのSSは珍しい上に
プロローグから既に良さげな雰囲気が
漂っていて期待せざるを得ない


15: ◆VsnC0Q.LCyza
2014/11/28(金) 01:00:26.04 ID:3hcvn06lo



16: ◆VsnC0Q.LCyza
2014/11/28(金) 01:01:10.81 ID:3hcvn06lo
「まさか果たし状を送ってくるとはな。本気なんだな、中野」

「押忍」

3月31日、あたしは兄さんを道場に呼び出しました。
以下略



17: ◆VsnC0Q.LCyza
2014/11/28(金) 01:02:45.59 ID:3hcvn06lo
「行きます」

あたしは一気に間合いを詰め、自分の想いをぶつけるかのように技を繰り出しました。
正拳、裏拳、手刀、掌打、蹴り。持てる技を駆使し、目の前の相手を倒すことだけに集中します。

以下略



18: ◆VsnC0Q.LCyza
2014/11/28(金) 01:03:58.87 ID:3hcvn06lo
「ぐっ!」

執拗なロー攻めが身を結びました。兄さんが一瞬顔をしかめたのを私は見逃しません。
上段突きで意識を上に逸らしてから、下段蹴りのモーション。兄さんが防御するため足に力を込めたところで、あたしは振り上げかけた左足を戻しました。下段蹴りはフェイントです。
あたしは素早く右足を振り上げ、上段蹴りのモーションに入りました。
以下略



19: ◆VsnC0Q.LCyza
2014/11/28(金) 01:05:12.77 ID:3hcvn06lo
「ハッ!」

右足を振り上げると同時に、腰と軸足を思いっきり左にひねりながら右足を振り下ろす。
蹴りの軌道が変化し、ガードを避けました。ここまでくれば頭部めがけて思いっきり蹴るだけです。


20: ◆VsnC0Q.LCyza
2014/11/28(金) 01:06:37.75 ID:3hcvn06lo

「見事だ……が、なぜ当てなかった?」

あたしは、ブラジリアンキックを当てずに寸止めしていました。

以下略



21: ◆VsnC0Q.LCyza
2014/11/28(金) 01:08:05.36 ID:3hcvn06lo
「どうして打ってこなかったんですか?」

「お前、ブラジリアン完璧に打てたの今が初めてだろ?」

「っ!」
以下略



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