過去ログ - 海未「離陸する夜/鎖をぬけて」
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3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/04(木) 03:35:33.46 ID:qag8A9teo

 ――海未ちゃん、遅いよ。

 公園入り口のポールに寄っかかっていた穂乃果が私に小さく手を振ります。

 花のこぼれ落ちるような笑顔は 宵闇の中でも光り輝くようで、
 せめて私の目の黒いうちは、
 あの笑顔を曇らせたくなかったのにと、
 何千回と繰り返した苦い後悔を また噛みしめてしまいます。

 強く噛んだ自分の唇はもう 冬の寒さにかさつき始めていて、
 これではあの子と重ね合わせるのに都合が悪いだろうか、
 と詮無いことを気に掛けます。
 これも、
 最期の時を一秒でも先延ばしにしたいからなのでしょうか。

 そのまま動けない私に、
 穂乃果はぴょんと地面に降り立つと
 まるでいつもと同じように身体を寄り添い、
 私の冷えた腕に触れては 難なく手を取ってみせるのです。

 半月が煌々と小さな私たちを照らし、
 穂乃果は何も知らない子どものように、
 真っ白な笑顔を 浮かべているのでした。




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