過去ログ - 阿良々木暦「ひなウルフ」
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16: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/12/11(木) 23:34:34.15 ID:ey41gLLW0

「何でそんなに自信満々なのか知らないっスけど……それだけ吹いたからには、殺されても文句は言えないっスよね?」

「やってみろ」

前傾姿勢を取り、手を鉤爪の形に。
出来ることならば四足歩行の姿勢を取りたいところだが、二足歩行で形成された軟弱な頚椎では頭部が邪魔になる。
なに、人間相手ならばこれで充分だ。

眼球のタペータムが暗闇に感応して虹彩を放つ。
威嚇を込めた唸り声と共に、飛びかかった。

「がああああああああっ!!」

跳躍と同時に爪を薙ぐ。

お兄さんはどんな反撃をしてくるのかと思いきや、アタシの腕をいとも簡単に掴み、あろうことか懐にその身を寄せる。

「な……」

目の前にお兄さんの顔が近付く。
攻撃するつもりが一切ない、まるで敵意の感じられない表情。

「荒木……」

「馬鹿にしやがって……離せ!!」

一気に感情が沸点を越える。
幾ら何でも、これは仮にも神を名乗るアタシ相手に許される事ではない。

このまま離れて再度応酬を展開するという選択肢もあったが、屈辱的な行動を前に、捕まったまま耳元で囁くお兄さんの肩口に噛み付く。

「ぐ……っ!」

退化した顎の咬筋力と歯では人間の肉を食い破る事は難しいが、犬歯を利用すれば欠片くらいは可能だ。

それに、アタシは腐っても大神だ。
ただの噛み付きで済ます訳がない。

「ぐ、う、お…………っ!?」

「あはっ、あはははははは!!」

相手の身体に牙を突き立てることで発動する、生命力の吸引。
これこそがアタシの本領だ。
この力で夜な夜な街を歩いて尻軽女を装っては、引っかかる馬鹿な男の生気をいただいていたのだ。

「どうっスかお兄さん?泣いて謝れば命だけは助けてやるっスよ?」

そろそろ精も根も尽き果てる筈だ。
一旦口を離し唇を舐める。

顔を伏せていたお兄さんが崩れ落ちた。
無理もない、命だけは助けるとは言ったものの随分な量を吸い取ったし、意識が無いどころか死んでいてもおかしくはないだろう。

「……馬鹿を言え」

「……?」

「やっぱりお前は三流だ。この程度のエナジードレインが何だ。猫の方が五倍はキツかったぞ!」

アタシを見上げるその顔は、不敵に笑っていた。

「な…………」

「それにな、せっかく荒木の姿を借りているなら、犬耳と尻尾のひとつでも生やしてから僕の前に来い!」

瞬間、いつの間にか胸に突き刺さる銀の十字架を確認したと思うと、アタシの意識は引き剥がされた。



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