7: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/12/11(木) 23:08:50.66 ID:ey41gLLW0
「誰っスかあんた?」
「え、あ……人違い……だったかな?」
おかしいな、と頭を掻く彼。
「タクシーならあっちにいっぱいいるっスよ」
大通りの方を指さして、とっとと行け、と視線で促す。
アタシはアンタらほど暇じゃねーんスから。
「あ、ありがとう」
アタシのテレパシーが通じたのか、女に肩を貸す彼。
「ううん……暦くぅん……」
「なんですか、カラオケもなしですよ」
「もうらめぇ……きもちわるいよぉ……」
「ちょっ、もうちょっと我慢してください片桐さん!」
横目で見ると、女の人の方はかなりの美人だった。
小さな身体に不相応な程にすごいプロポーションをしている。
自分の体型に自信がないとまでは言えないが、同じ女としては羨ましい限りだ。
あ、何処かで見たことあると思ったら、彼女、アイドルの片桐早苗じゃないっスか。
なんだ、アイドルならプロポーションで負けても悔しくないっスね。
……ちょっと悲しくなってきたっス。
「…………」
片桐早苗とその片割れは、アタシの悲壮感も知らずに大通りへと向かって行く。
……何だったんだろうか。
そもそもアイドルがこんな時間にこんな場所で酔っ払っているなんて考えにくいし、はしゃぎ過ぎて幻覚でも見たのかも知れない。
精神が絶頂を迎えると妖精さんや普段見えないものが見えるのはよくある話っス。
この間なんて修羅場のミラクルハイテンションで描いてる時にガスマスクのおっちゃんが頭上に降臨したこともあるし。
修羅場あるあるその2っスね。
「ねえ彼女、一人?」
と、人気のない場所をうろついていたのがようやく幸いしたようで、男の二人組が声を掛けてきた。
心中でほくそ笑む。
「見ての通りっスけど?」
なるべく尻の軽い女を主張すべく、髪をかき上げて二人組に居直る。
その際、髪に付着していた灰が指先を灰色に彩った。
もちろん、周囲に火種がある訳でも、煙草を吸っている人がいる訳でもない。
あ、いや、今のはウソっス。
二人組の片割れが煙草吸ってました。
でも正直アタシ、煙草って嫌いなんスよねえ。
ケムいし、肺に悪いし。喫煙に文句はないっスけど、喫煙者の皆さんは何が楽しくてあんなもん吸ってんスかね。
「良かったら俺らと遊ばない?」
「いいっスよー」
ま、いいか。
舌なめずりをして嗤う。
そろそろお腹も悲鳴をあげているようだし、とっとと今晩のノルマを達成してしまいましょうか。
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