過去ログ - 鷹富士茄子「吐息とお酒と」 -SS速報VIP

過去ログ - 鷹富士茄子「吐息とお酒と」

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1: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/12/21(日) 00:24:36.13 ID:5w60kQNEo
時の流れとは早いものでして、気づけば12月となりました。今年も残すところあと僅かです。

クリスマスの公演を迎えてしまえば、いつの間にやら年賀状が届く時分となり、年の瀬の慌ただしさというものを改めて痛感することとなりましょう。

事務所の子によっては、パソコンでさらっと済ませてしまったりメールを送ったりと様々ですが、やはり私には手書きの方が性に合っているよう思えます。

ですからせっせっと葉書の束を積み上げている内に、ふと思い至りこうして一筆認めることとさせて頂きました。

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2: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/12/21(日) 00:26:24.02 ID:5w60kQNEo
　
今年の初夏にスカウトをされ、この道を行くと心に決めた時、お二人はとても驚いたことかと思います。

当の私でさえ、最初のレッスンを受けるまでは実感というものがてんで湧いてはおりませんでした。

3: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/12/21(日) 00:27:41.77 ID:5w60kQNEo
　
　まだまだ書き足りないことはありますが、この辺りで筆を置かせて頂きます。直接お話ししたいことばかりですから。

そちらに戻れるのは三が日を過ぎてからになりそうです。クリスマス公演、ニューイヤー公演と立て続けなので。

4: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/12/21(日) 00:30:27.90 ID:5w60kQNEo

　「ふぅ。」

両親への手紙を書きあげて一息つくと、時刻は既に二十三時を回っておりました。

5: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/12/21(日) 00:31:58.32 ID:5w60kQNEo

エレベーターで三階から一階へ。

扉を出た先には女子寮のエントランス部分が広がっております。

6: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/12/21(日) 00:33:39.28 ID:5w60kQNEo

「こんな夜更けにお出かけかい？」

あいさんが言います。

7: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/12/21(日) 00:35:19.50 ID:5w60kQNEo

そう言ってあいさんは「ふう」と吐息を立ち昇らせます。

ふわりと浮かび上がった白い息は、そのまま静かに中空へと溶けこんで。

8: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/12/21(日) 00:37:44.89 ID:5w60kQNEo

　「へっくちゅ。」

そんな静けさを破ったのは、くしゃみ。

9: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/12/21(日) 00:40:03.04 ID:5w60kQNEo

「ああ、そうだ。茄子くん。」

そんな物思いに耽っているとあいさんの声。

10: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/12/21(日) 00:41:22.44 ID:5w60kQNEo

「そんなに抜けてますか、私。」

「目を離すと迷子になりそうな危なっかしさはあるわね。

11: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/12/21(日) 00:44:08.95 ID:5w60kQNEo

　彼女たちの言葉通り、待つこと十分ほどでしょうか。

「チン」と開いたエレベーターからプロデューサーが姿を現します。

12: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/12/21(日) 00:45:32.26 ID:5w60kQNEo

「随分と冷え込むようになりましたね。」

「そうだなぁ。こう寒いといつ雪が降ってもおかしくないよ。」

13: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/12/21(日) 00:46:46.14 ID:5w60kQNEo

「確かに。冬は雪見で酒が旨い。
　『春には夜桜、夏には星、秋に満月、冬には雪』ってね。」

14: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/12/21(日) 00:47:50.55 ID:5w60kQNEo

少し、弾んだ私の声。

やれやれといった風情の彼の声。

15: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/12/21(日) 00:48:50.84 ID:5w60kQNEo

　その後、私たちは楓さんの部屋を訪れました。

楓さんは既に出来上がっているようでして、何とも言えぬ駄洒落を飛ばし、からからと笑っております。

16: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/12/21(日) 00:50:19.11 ID:5w60kQNEo

「騒がしくって済まないね。」

「いいえ、こういった雰囲気もお酒の楽しみですから。」

17: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/12/21(日) 00:51:44.17 ID:5w60kQNEo

「なるほどね。確かに、今日のような日は外で呑んでもいいと思えるものがある。
　しかし良い言葉なんだが、彼が言うと気障っぽく聞こえるのは何でだろうね？」

18: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/12/21(日) 00:52:54.79 ID:5w60kQNEo

「ああ。お酒に関しては得手不得手があるからね。
　何も美味しく呑むことが重要なのではない。必要なことは季節季節を楽しむことだよ。
　はらはらと散る桜に胸を打たれ、澄んだ夜空に瞬く星々に思いを馳せる。そんな単純な気持ちでいいのさ。」

19: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/12/21(日) 00:53:58.16 ID:5w60kQNEo

あいさんはその視線を三人へと向けます。

既にプロデューサーは酔いつぶれており、楓さんによってその顔はペンを走らせるだけのキャンバスとなっているようでした。

20: ◆bsVOk5U9Es[sage]
2014/12/21(日) 00:56:50.42 ID:5w60kQNEo

読みやすさ、読みやすさってなんだ
短いですがこれで完結となります
ありがとうございまいした

21:名無しNIPPER[sage]
2014/12/21(日) 00:57:20.76 ID:tf5Zex+AO
からから笑いてえな
乙

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