6: ◆IWuyJvzLOZKF[saga]
2014/12/27(土) 07:26:54.22 ID:HSj1W9VK0
しかしそれでも万が一という可能性はある。
だから上条はわざわざ自分が身体を張って無駄な争いが起きないようピエロに徹したのだ。
その努力も少女自身の手によって水泡に帰してしまったが。
「でも結構な距離を走ったのに平気でついてきたってことはやっぱり大したことなかったのか? 良かった良かった」
「……何よそれ、強者の余裕ってやつ?」
「何でそうなるんだよっ!? 人がせっかく心配してたのを捻くれた捉え方しやがって……」
少女の醸し出す不穏な空気に、上条は内心悲鳴を上げる。
あわよくばこのままやり過ごせるかと期待してたのに……。
今もこのように絡んでくる少女を相手にして、上条はこれまで一度も負けたことがない。
たった一度の例外もなく、完全に全戦全勝。
適当に負けてあげれば少女の気も逸れたのかもしれないが、如何せん上条は演技が壊滅的に下手糞だ。
以前「マイリマシター」とその場に倒れこんだら、一晩中女子中学生に追い掛け回されるという貴重な体験をする羽目になった。
それに負けたことがないと言っても食らえば即死してもおかしくない電撃を前にすれば、上条の精神が疲弊するのも当然だろう。
「はぁー。 ……いいわ、今日は見逃してあげる」
「へ?」
もしかして上手く誤魔化せた?
いつもならここで問答無用で電撃が飛んできそうなものだが、本当に臨戦態勢を解いたのか少女の周りでバチバチ言ってた火花も収まっていく。
だが油断はできなかった。
ただ自分より強い人間が許せないという、今時の格闘漫画のキャラクターよりシンプルな思考の持ち主だ。
何がキッカケで再び襲いかかってくるか分からない。
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