過去ログ - 恭子「いつか聞きたいその2文字」
1- 20
5: ◆aaEefGZMoI[saga]
2015/01/22(木) 20:25:40.35 ID:DsjzTcAto
それが彼女と私の第一接触だった。
振り返ってみれば、彼女が私を『末原さん』と呼んだのは、この一回を含めて数えるほどしかない。
会い直すたび、彼女は私のことを『恭子』と呼んでくる。
私が何度『末原さん』に訂正しても、次会うときはまた『恭子』だ。
そんな応酬を繰り返した結果、最終的に私のほうが折れ、結局『恭子』呼びで定着してしまったというわけだ。
それにしても、今の洋榎が私を『末原さん』などと呼ぶ光景はまったくもって想像できない。
もし呼んできたら、私は吹き出すことだろう。

元々実力のあった彼女は1年生の頃からレギュラー入り、私は3年生から。
2年生の時に声がかかったことはあったが、自分よりも得点稼ぎの期待できる後輩に席を譲った。
とにかくも私は2年遅れで、彼女と同じ土俵に立ったのだった。
その一つのけじめとして、公の場では私の彼女に対する呼び名は『主将』に変わり、言葉遣いも敬語に変わった。
多分、彼女への気持ちが少しおかしな方向へ傾き始めたのは、レギュラーとしての活動が始まってからだと思う。

インターハイ予選の一週間前、土日を使って泊まりこみ合宿があった。
春季大会を戦った5人、かつインターハイのレギュラーとして出場する5人だ。

特に目立ったきっかけがあったわけではない。
ただ、泊まり込みの合宿というのは、生活を共有する場であり、人が普段見せない姿を見せる場である。
いつもの練習なら、部活仲間が風呂に入ったり、歯を磨いたり、布団をかぶって寝ている様を見ることはない。
私は、彼女がドライヤーで髪を乾かし、スキンケアのローションを顔にかぶり、オイルを肌に塗りたくる様子を、まじまじと眺めていた。

「絹! どんな感じ」

「おー、ええ感じやお姉ちゃん、めっちゃキレイやで」

「うっしゃ! これでうちもモテモテガールやな!」

「あはは。お姉ちゃんも頑張りいな」

「誰かできたらなー」

妹とお互いの顔と肌を見せ合いつつ、談笑する彼女。
こうして見えていると、彼女もやはり女子なのだ、などと思う。
いや、女子はもちろん女子なのだが、普段のアレが女子らしいソレに見えるかといえば。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
24Res/29.08 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice