1: ◆54DIlPdu2E[saga]
2015/01/22(木) 20:46:08.47 ID:FM5KuAEp0
(長くなるかもしれないので初めて酉付けました)
・・・・・
昔々の物語。
商人「子供達よ、都会のお土産は何がいいかな?」
長兄(20)「特に何も…どうしてもと言うなら、趣味の木彫に使う新しいナイフを」
長姉(19)「最新デザインの青いドレス♪」
次姉(18)「大粒真珠の首飾り♪」
次兄(17)「…なめしていない熊の毛皮…」
末妹(14)「私は欲しい物はないけど、元気に帰ってきてねお父さん」
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2: ◆54DIlPdu2E[saga]
2015/01/22(木) 20:46:49.80 ID:FM5KuAEp0
長兄「ははは、末妹は本当に欲がないな」
長姉「ふん、何よ、いい子ぶって!」
次姉「お父さんに一番可愛がられているからって、調子に乗んじゃないわよ!」
3: ◆54DIlPdu2E[saga]
2015/01/22(木) 20:47:21.44 ID:FM5KuAEp0
商人「やれやれ、どうにか仕事も順調だったし、ナイフもドレスも首飾りもすぐ買えた」
商人「熊の毛皮だけは少し苦労した。毛皮製品の工房にも在庫がなくて」
商人「郊外の村で、ちょうど家畜を襲った熊が仕留められた話を聞いて」
4: ◆54DIlPdu2E[saga]
2015/01/22(木) 20:48:08.93 ID:FM5KuAEp0
馬の蹄「闊歩、闊歩…」
商人「おっ?遠くに灯りが見えるぞ。行ってみよう。ハイヨー!」
鞭「ビシッ」
5: ◆54DIlPdu2E[saga]
2015/01/22(木) 20:48:44.73 ID:FM5KuAEp0
商人「ふう、美味しかった…どなたか知りませんがありがとう」
商人「ん?皿の下に手紙が挟まっている」
手紙『お腹は膨れましたか?では、この応接間の隣の客間でお休みください』
6: ◆54DIlPdu2E[saga]
2015/01/22(木) 20:49:16.98 ID:FM5KuAEp0
馬「ひひひん!」
商人「お前もゆっくり休めたようだな。…本当に地図もある。よし、帰ろうか」
商人「…おや?昨夜は気が付かなかったが…バラの香りがどこかから漂ってくる」
7: ◆54DIlPdu2E[saga]
2015/01/22(木) 20:51:53.78 ID:FM5KuAEp0
恐ろしい声「グゥオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
商人「!?」
馬「ひいん!?」
8: ◆54DIlPdu2E[saga]
2015/01/22(木) 20:52:20.65 ID:FM5KuAEp0
恐ろしい声の主(以下野獣)「今までなぜ姿を現さなかったか、わかるか?貴様を怖がらせないためだ」
野獣「きっと善良な旅人だろうと、一宿一飯を与えた。なのに…盗人だったとはな!」
商人「ゆ、許してください、いえ…申し訳ありません!!」
9: ◆54DIlPdu2E[saga]
2015/01/22(木) 20:52:49.08 ID:FM5KuAEp0
商人「い、家には5人の子供が私の帰りを待っています」
商人「最期の別れとして、一目会いたいのです…」
野獣「ふん、残念ながらお前の妻はこのまま子持ちの未亡人となろう」
10: ◆54DIlPdu2E[saga]
2015/01/22(木) 20:53:24.95 ID:FM5KuAEp0
商人「ドレスも宝石もねだらない、欲のない子、お土産には赤いバラ一輪を、と…」
野獣「…その娘のためのバラだったのか?」
商人「は、はい。それも、最初は私が無事戻れば何もいらない、と言ったのです」
11: ◆54DIlPdu2E[saga]
2015/01/22(木) 20:53:54.67 ID:FM5KuAEp0
野獣「よかろう。一度家に帰るがいい」
商人「ほ、本当ですか!?」
野獣「しかし、条件がある。その末の娘を伴って、ここへ戻って来るのだ」
12: ◆54DIlPdu2E[saga]
2015/01/22(木) 20:54:35.17 ID:FM5KuAEp0
馬車「ガラガラガラ…」
商人「困ったことになった…」
商人「子供達に…末妹にどう言えばいいのか…」
13: ◆54DIlPdu2E[saga]
2015/01/22(木) 20:55:13.29 ID:FM5KuAEp0
長兄「ええっ、またその屋敷に戻るのですか、父さん!?」
長姉「末妹のせいよ!あんたがそんなもの欲しがるから!」
次兄「…あああ、まだ脂の残る熊の毛皮…むせかえる獣の臭い…堪らないよお」クンカクンカスーハー
14: ◆54DIlPdu2E[saga]
2015/01/22(木) 21:01:19.34 ID:FM5KuAEp0
商人「…という訳だ…」
長兄「やっぱり俺が末妹の代わりに行くよ。銃も持って行こう、野獣を倒してやる!」
長姉「だめよ、兄さん!お父さんだけじゃなく兄さんまでいなくなったら!」
15: ◆54DIlPdu2E[saga]
2015/01/22(木) 21:02:11.50 ID:FM5KuAEp0
次兄「野獣は末妹を連れて来いとは言ったけど、二人だけで、とは言ってない」
次兄「それに父さんの子供以外の人間はダメだと言うなら、俺が同行しても約束破りにはならない」
長兄「そうだけど…なら長男の俺が…」
16: ◆54DIlPdu2E[saga]
2015/01/22(木) 21:02:39.98 ID:FM5KuAEp0
長兄「末妹…荷造りは済んだか?」
末妹「あまり多くの物は…カバン一つ分だけにしたわ」
末妹「お母さんの形見の十字架は持って行くけど」
17: ◆54DIlPdu2E[saga]
2015/01/22(木) 21:03:28.01 ID:FM5KuAEp0
次兄「動かない毛皮のコレクションより、もっと素晴らしいことを始めたいのさ」
次兄「言わばそれは昨日までの自分との決別。男の決意の表れだ」
長兄「…よくわからんが、末妹のため勇気を奮い立たせてくれたお前を尊敬しているよ」
18: ◆54DIlPdu2E[saga]
2015/01/22(木) 21:04:07.63 ID:FM5KuAEp0
次兄「しかし職人に頼めば、これからでも防寒具か何か作ってもらえるだろう」
長兄「わ、わかった。有効に使わせてもらうよ」
腐りかけの毛皮「臭気ぷ〜ん」
19: ◆54DIlPdu2E[saga]
2015/01/22(木) 21:06:07.25 ID:FM5KuAEp0
そんなこんなで、親子3人は野獣の屋敷に向かった…
野獣「期限いっぱいだが、約束は守ったようだな」
20: ◆54DIlPdu2E[saga]
2015/01/22(木) 21:06:46.64 ID:FM5KuAEp0
野獣「こ、こんな奴に用はない…今すぐ連れて帰れ、娘だけ残してな!」
商人「娘だけを!?」
末妹「お父さん、私のことは構わないで。この方の仰るとおりにして」
21: ◆54DIlPdu2E[saga]
2015/01/22(木) 21:08:12.02 ID:FM5KuAEp0
野獣「…はあふう…奴の涎が付いてしまった…鼻水も…」フキフキ
野獣「商人、さっさと連れ帰れ!」
商人「は、はい…。帰ろう次兄!」次兄の襟首むんず
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