1: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/02/25(水) 20:04:18.92 ID:mA9JqB8io
「お疲れ様でした」
レッスンを終えて帰路に着く。始めた時はまだ登り切っていなかった太陽は既に沈んでいて、人工の明かりが街を照らす。
すっかり遅くなってしまった。いくらライブを控えているからとはいえ、空が真っ暗になるまでレッスンをするのは自分でもどうかと思った。
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2:名無しNIPPER
2015/02/25(水) 20:06:54.61 ID:mA9JqB8io
(明日はコンディション調整が必要かもしれないわね……)
最寄り駅で電車を降りて、今日は時間もないしお惣菜にしようとスーパーに寄り道する。
値引きされたひじき煮と筑前煮をカゴに入れて、レジに向かう途中でふとケーキが目に止まる。
3:名無しNIPPER
2015/02/25(水) 20:07:43.31 ID:mA9JqB8io
ライブの準備に忙しかったとは言え、まだ十代だと言うのに自分の誕生日を忘れるとは。
まぁ、今から祝っても遅くはないだろう。ショートケーキを一つカゴに入れて、会計を済ませて足早に自宅へ急ぐ。
甘い物を食べるなら、早めにご飯を済ませなければいけない。
4: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/02/25(水) 20:08:14.27 ID:mA9JqB8io
色々と考えを巡らせながら、自宅へと帰ってきた。
「ただいま」
鍵を開けて、誰も居ない部屋に向かって呟くと。
5: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/02/25(水) 20:09:01.35 ID:mA9JqB8io
ぱん! ぱん!
6: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/02/25(水) 20:09:44.50 ID:mA9JqB8io
暗闇から突然破裂音が鳴り響く。咄嗟に電気を付けると、玄関にクラッカーを持った真美が居るのが分かった。
「千早お姉ちゃん、お誕生日おめでとう!」
満面の笑みで私を祝ってくれる真美。嬉しいんだけど……嬉しいんだけど。
7: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/02/25(水) 20:10:18.69 ID:mA9JqB8io
誇らしげに胸を張る真美。うん。嬉しいんだけど、帰りの時間とか大丈夫なのだろうか。
「真美。気持ちは嬉しいんだけど、もう夜も遅いんだから、帰りなさい」
「だいじょーぶ! 千早お姉ちゃん家に泊まるって言ってきたから!」
8: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/02/25(水) 20:11:35.47 ID:mA9JqB8io
「全くこの子は……私が断ったらどうするつもりだったの?」
「うっ……なんも考えてなかった……」
「はぁ……。いい? 騒がしくしない事。それが守れるならしょうがないから泊まってもいいわよ」
9: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/02/25(水) 20:12:52.25 ID:mA9JqB8io
真美はぱあっと目を輝かせると、私が持っていたスーパーの袋を奪ってリビングの方まで行ってしまった。
やれやれ、と頭を軽く振って、後を追いかけるようにリビングへと向かった。
リビングの扉を開けると、そこは綺麗に飾り付けがされていて、小学校のクラス会みたいな雰囲気だ。
10: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/02/25(水) 20:13:34.06 ID:mA9JqB8io
きょろきょろと見渡していると、真美が何か不満そうな声を上げた事に気がついた。
そちらに顔を向けると、何故か台所に居る真美はスーパーの袋を覗き込んで顔をしかめているのが見えた。
「千早お姉ちゃん、ケーキ買っちゃったの!?」
11: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/02/25(水) 20:14:18.60 ID:mA9JqB8io
「真美も買っちゃったよ〜〜」
そう嘆きながら真美は冷蔵庫から何か箱を取りだして、ケーキ! とにっこり笑った。
良く見ると、駅前のケーキ屋さんの名前が箱に書いてある。ここに来る前に買ったんだろう。
12: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/02/25(水) 20:15:24.36 ID:mA9JqB8io
「なら、一緒に食べましょう?」
「ん! あ、あとね〜、晩ご飯も一緒に食べようって思ってさ」
「晩ご飯?」
13: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/02/25(水) 20:15:58.86 ID:mA9JqB8io
私にも見えるようにちょっと高く別の箱を掲げる真美。今度は一目見てあのフライドチキンと言う事が分かる。
「私、ご飯のおかずも買ってきちゃったんだけど……」
「それも全部一緒に食べればいいっしょ!」
14: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/02/25(水) 20:16:40.45 ID:mA9JqB8io
冷めちゃったからとレンジでチキンを温めている所を見ながら、私は自分の胃袋の心配をした。
程なくして、温まったチキンとサラダと私の買ってきたお惣菜がテーブルに並ぶ。
「いただきまーす!」
15: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/02/25(水) 20:17:09.59 ID:mA9JqB8io
手が汚れないようにと紙ナプキンでチキンを食べる。一方の真美は、汚れなどお構いなし! と言わんばかりに鷲づかみして食べている。
……本当に、美味しそうに食べるわね。
数十分後に、ご飯を平らげた私達は、早速ケーキの箱に手を付ける。
16: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/02/25(水) 20:19:16.90 ID:mA9JqB8io
そう言えばこの前真美が遊びに来た時は、私はチョコケーキを食べていたわね。
お皿に取り分けて、さあ食べるかと言うまさにその時。
突然、リビングが暗闇に包まれる。停電だ。非常用の懐中電灯が確か近くに……。
17: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/02/25(水) 20:19:57.00 ID:mA9JqB8io
がちゃん!
18: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/02/25(水) 20:20:32.66 ID:mA9JqB8io
何かが割れる音がして、小さく悲鳴が上がる。
懐中電灯を探し出して光を真美の方に向けると、真美の足下がきらりと光を反射する。見ると、ガラスのコップが割れていて、破片が光を反射していた。
「真美、大丈夫? 怪我はない?」
19: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/02/25(水) 20:21:43.33 ID:mA9JqB8io
改めて見ると、ガラスの破片が結構散らばっていて、飲み物がこぼれていて……、ちょっとだけ血が床に付いていた。
「千早お姉ちゃん、ごめんなさい……コップ割っちゃって……」
「真美は悪くないわ、停電したからビックリしちゃったのよね。もう大丈夫だから」
20: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/02/25(水) 20:22:09.50 ID:mA9JqB8io
「千早お姉ちゃん、怪我して……!」
「破片を踏んだみたい。大丈夫よこれくらい。さ、危ないから片付けましょう」
「真美がやるから待ってて。千早お姉ちゃん、新聞紙と袋ある?」
21: ◆RY6L0rQza2[saga]
2015/02/25(水) 20:24:13.79 ID:mA9JqB8io
真美は立ち上がって、破片を踏まないように気を付けながら玄関へと向かっていった。
偉いわね、真美……いつもは悪戯ばっかりなのに、こうやって率先して片付けしてくれて。
真美がガラスの破片を集めて捨てているのをぼんやり見ていると、今度は救急箱の在処を聞いてきた。
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