過去ログ - 阿良々木暦「えりハーミット」
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12: ◆8HmEy52dzA[saga]
2015/02/25(水) 20:53:09.64 ID:DLa1I0Qh0

「影縫さんが言っていることは……本当。今のわたしは、人間の域を越えている……?」

自分で言ってて馬鹿らしいと思うくらいだから、聞いている側からしたら、相当のものだろう。

阿良々木さんの期待を裏切るのは、それが謂れのないものであろうと、少し心が痛い。

「でも……やめるわけには……いかない」

想いを言葉に乗せ、二人を睨み付ける。
何があっても意志は変えない、と無言の圧力で気位を示す。

「……うちは快楽殺人者とちゃう。えんばんと不死身の怪異の専門家や」

「……知っています」

「どないしても気ィは変われへんか」

「はい」

「水谷……」

「ほな、しゃあないな」

影縫さんが歩を進める。

「言葉が通用せぇへんなら、力に訴えるしか、うちはやり方を知らん」

わかっている。
間違っているのは、わたし。

わたしは取り返しのつかない、時間という枠を弄っていたずらに常識を曲げている。

「せめてもの情けや。いっこも痛ないようしたるけど……うちらが同情で止まることはあれへんで」

「……お気遣い、ありがとう……?」

それはわたしのせめてもの抵抗だったのか、馬鹿げた台詞を紡ぐ声は震えていた。
当たり前だ。
何回殺されたって、死ぬことに対する恐怖が拭えるはずもない。

「ほな、今日のところはさいなら」

無慈悲な言葉と共に手刀が迫る。
きっとあの手に心臓を貫かれるのだろう、なんて他人事な感想が思い浮かぶ。
唯一の救いは、影縫さんも斧乃木ちゃんも、毎回それほど苦しまずに殺してくれることだ。
そんなことを救いとしている時点で、わたしはもう人ではないのかも知れないけれど。

目を閉じる。
またやり直そう。
いずれ報われる時は来る。
そう信じることしかわたしには出来ないし、信じてもいないとやっていけない。



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