4: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/04/01(水) 10:40:30.57 ID:w+Y5NOKn0
私は一緒に居られるだけでいいから。
いつか私がそう言った時、憂は寂しそうな、嬉しそうな、それでいて悲しそうな顔で曖昧に微笑んだ。
それ以来、そんな想いも言葉にはしなくなったけれど。
悲しませるくらいなら、私はただ、愛する他にないんだ。
それさえも憂を苦しめ、悲しませるなら、その時は愛せない事を飲み込むだけだ。
そんな風に思うくらい、もうどうしようもない程、憂のことを
愛してしまっていたし、ふたりぼっちでいられるなら−−私は形式なんて、どうでもよかった。
唯先輩と同じくらい、そうじゃなくても、少しでも、必要としてくれるなら、それでよかったから。
私は未だ目覚めきらない思考で、裸のまま憂を探しに
部屋から出ると、彼女も裸のまま、キッチンで水を飲んでいた。
「あれ? 梓ちゃん、ごめん……起こしちゃったかな?」
「ううん、たまたま、目覚めちゃって……そしたら、憂がいなくて……」
ため息まじりで佇んでいた彼女は、やがてあられもない姿の
私に気がつくと、はっとしてこちらを見つめたのだった。
その目は少し赤く腫れているように見えた。
そして寝ぼけ眼で繰り出される私の言葉に、憂はそれまでの申し訳なさそうな、
少しだけ泣きそうな顔から穏やかな笑顔を浮かべて、
「梓ちゃんは……本当に可愛いね」と、私の黒い髪をゆっくりと撫でた。
そうやって、憂はいつもいつも、私のことを「可愛い」と言ってくれた。
今みたいに髪を撫でながら、抱きしめられながら。
長いキスの後に、頭の中の花火が、散り散りになるその前に。その後に。
私はそれだけで身体の芯が熱くなって、ひとつになりたくなって、たまらなくなってしまう。
いつか、そんな私が「私っていやらしい女の子なのかな?」と訊ねると、憂は笑って、
「梓ちゃんがそれだけ私を必要としてくれてるみたいで、嬉しいよ」と、優しく微笑んでくれた。
その笑顔が、私はこの世界で一番愛おしいと思う。とは、言えなくて……。
私は小さく「ありがとう……」と返すので精一杯だった。
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