1:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/12(火) 07:25:57.33 ID:PyKvkZDTo
※注意点
・結衣人称です
・モノローグ多いです
・想像と自己解釈で書いてる部分が多いので、他の人と解釈が違う部分もあるかと思います
・結衣が好きです
SSWiki : ss.vip2ch.com
2:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/12(火) 07:27:47.40 ID:PyKvkZDTo
最初はほんとに偶然だった。
早朝にサブレを連れて、これから通うことになる高校を見ておこうと思っていただけ。
朝も早かったしすぐに帰るつもりだったから、寝るとき着ていたクマさん柄のパジャマのまますっぴんで出掛けていた。
3:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/12(火) 07:28:34.64 ID:PyKvkZDTo
けど、サブレは相手から近付かれると怯えて逃げてしまうのに、相手が逃げると追いかけてしまう。え、もしかしてただの捻くれ者なの?
その時の野良猫は気が弱かったのか、サブレを見てさっと逃げ出そうとしてしまった。
これから通う高校に期待を膨らませて、この道を毎日通るのかなぁとかボーッとしていたんだと思う。
4:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/12(火) 07:29:27.15 ID:PyKvkZDTo
けどこの時は慣れない道で、しかも交通量の割と多い道路がすぐ傍にあった。
走るサブレは楽しくなったのか、慌てて追いかけるあたしからさらに逃げるように走り出す。
待って!サブレ!危ないから!
5:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/12(火) 07:30:26.72 ID:PyKvkZDTo
聞いたことのない嫌な大きな音がして、真っ黒い車は自転車とその人を弾き飛ばした。
そこからのことはあまりにも衝撃的だったせいか、頭が働いてなくて正直なところあんまり細かく覚えてなかったりする。
サブレの無事を確認した後、もう逃げないように抱き抱えてから、あたしのせいで怪我をした、サブレを救ってくれた人の姿を見た。
6:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/12(火) 07:31:20.76 ID:PyKvkZDTo
まず救急車を呼んで、それから…よく覚えてないけど、事情を聞かれてサブレが逃げ出したことをそのまま話したら、あたしは被害者でも加害者でもないからということで早めに解放された気がする。
その時はサブレが無事で安堵していた気持ちのほうが強かったかもしれない。
今にして思えばこのときに名前を聞いておけばよかったと思う。教えてもらえたのかどうかは知らないけど。
7:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/12(火) 07:32:12.58 ID:PyKvkZDTo
しばらくたって落ち着きを取り戻すと、まるで運命の出会いだったのかな、という錯覚をしたりもした。
あたしは高校に入ってから友達との付き合いを続けているうちに、髪も茶色になったし格好もそれに伴って変わっていった。
嫌われたくなくて回りに合わせているうちに、流されるままどっちかで言うとイケイケの女子高生みたいな見た目になった。
8:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/12(火) 07:33:13.70 ID:PyKvkZDTo
ほんとは入院してるその人のお見舞いにいけたらよかったんだけど、名前もわかんない人の入院先を知る方法があたしには思い付かなかった。
もしかしたらそこまでしようとは思っていなかっただけかもしれないけど。
結局なかなか見つからなくて、もう会えないのかなという思いが頭をよぎった頃、その人を学校の廊下で見つけることができた。
9:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/12(火) 07:33:56.28 ID:PyKvkZDTo
その人はあたしとは別のクラスだった。
だから、その人がいるクラスに軽く話せる程度の友達を作って、用もないのに話しかけに行った。
その友達と話しながら、その人のことを横目で何度も、何度も見ていた。
10:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/12(火) 07:34:56.21 ID:PyKvkZDTo
その人の名前を知りたくてクラスの人に聞いてみたけど、最初の数人の子は、さぁ…なんだったっけ?とか言っていて本当に苦しくなった。
きっと自分が怪我をさせてしまったせいで学校に来れなかったからクラスに馴染めてしないんだ、きっとそうだ。そうなら、なおさらちゃんと謝らないと。
あたしがその人のことを気にしているのがなるべく周りの人に気付かれないよう、期間を置きながら少しずつ調べてようやく名前を知ることができた。
11:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/12(火) 07:35:48.88 ID:PyKvkZDTo
あたしには、学校ではずっと一人でいるヒッキーに話しかける勇気が出なかった。
自分が悪いんだけど、事故について謝ることから始めて、拒絶されることを思うと動けなくなった。
それでもなんとかしなきゃと思って、ヒッキーのクラスの先生に事故のことを話して住所を聞き、一度だけ勇気を出して家に菓子折りを持ってお礼と謝罪をしに行ったことがある。
12:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/12(火) 07:36:35.99 ID:PyKvkZDTo
伝えてほしいと謝罪の言葉を話すと、兄のことなんてぜーんぜん、ほんと気にしないで下さいねーと言われてしまった。
この時はもしかしてヒッキーは妹さんと仲が悪いのかな、なんて思ってしまった。実際は引くほどのシスコンだったけど。
ヒッキー本人にもちゃんと伝わるかな。小町ちゃんには名前も言ったし。もしかしたらそれを聞いてヒッキーの方からあたしを探してくれるかも。
13:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/12(火) 07:37:18.43 ID:PyKvkZDTo
それからも機会を見つけては、声をかけようとヒッキーを眺めていたけど話しかけることはなくて、いつ見てもやっぱりヒッキーは一人だった。
たまにクラスの男の子なんかが話しかけるのを見たこともあった。でもヒッキーはめんどくさそうに、無愛想な返事をするだけ。
もしかしたら、周囲を寄せ付けないようにしているよう見えるのは気のせいじゃなくて、ヒッキー自身がほんとにそうしているのかも。なんのためかはわからないけど。
14:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/12(火) 07:38:36.26 ID:PyKvkZDTo
結局何も言えないまま時間が流れ、そうこうしている間に二年生になった。
結局あたしは謝ることも何もできないまま、ほぼ一年を過ごしたことになる。
その間、朝礼や体育、何かのイベントがある度に、常に目でヒッキーを追っていた。
15:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/12(火) 07:39:22.73 ID:PyKvkZDTo
二年生の新しいクラス分け発表の掲示板を見るときに一番に探したのは、自分の名前じゃなくて比企谷八幡の文字だった。
F組にその名前を見つけ、同じクラスに自分の名前を探す。
あった。あたしとヒッキーは同じクラスだ。
16:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/12(火) 07:40:28.83 ID:PyKvkZDTo
毎日が同じだった。
でもあたしもそれは同じで、クラスで仲良くなった友達と空気を読みながら付き合ってはいたけど、相変わらずヒッキーに話すきっかけは掴めなかった。
あたしは少しだけ、人に合わせることに、流されることに疲れていた。勇気を出せないでいる自分にも。
17:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/12(火) 07:41:25.28 ID:PyKvkZDTo
優美子や姫菜にはこんなこと相談なんかできない。こんなの、あたしには似合わないし。こんな乙女みたいなことバカにされちゃうかもしれない。
困った私は平塚先生に相談することにした。そこで奉仕部の存在を教えてくれた。
なんでも、生徒の悩み相談を受けて手助けしてくれる部活らしい。
18:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/12(火) 07:42:08.93 ID:PyKvkZDTo
初めて話したヒッキーの印象は、それはもう最悪だった。ほんとに。なんなのこの人、と思った。
同じクラスなのに、まさか自分のことを認識してもいなかったなんて。
あたしはずっと前から見てたからよく知ってたけど、まさか名前まで知らなかったなんて。
19:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/12(火) 07:43:09.05 ID:PyKvkZDTo
でも、それからのあたしは、少しだけ変わることができた。
クッキーは結局うまく作れなかったけど、元々食べてもらおうとしてたのはヒッキーだし、結果的にあたしから奉仕部へ出した最初の依頼は解決してもらえたってことになるのかな。
あたしが憧れるぐらい、最初からゆきのんは強くてかっこよかったし、ヒッキーは基本的に最悪だったけど、たまに優しかった。
20:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/12(火) 07:43:58.71 ID:PyKvkZDTo
それから奉仕部でいろんなことがあった。
あたしとゆきのん、あたしとヒッキー、ゆきのんとヒッキー。
三人の距離は近付いたと思ったら離れて、離れたと思ったら近付いて。
21:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/12(火) 07:44:41.46 ID:PyKvkZDTo
ヒッキーはいろんな依頼に対して、屁理屈みたいなよくわかんないこと言って、わけわかんないこともたくさんやって…。
あたしには真似の出来ない方法で、ヒッキー自身が傷だらけになりながら問題を解決してた。
そんなヒッキーを見るのはとても辛かった。けどあたしには何もできなかった。見ているだけだった。
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