過去ログ - 奉太郎「高く高く、空に昇れば」
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1:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 09:59:43.51 ID:BVZ5thB50
三年間という時間は人の内面を変えるには短すぎる。

容姿なら小指の先ほど変わるかもしれないが

生まれてから今まで過ごした日々により形成された人間性が

高校の三年間だけで変わってしまうほど人間は薄っぺらいもんじゃない。

変わったように見えるのは本人が取り繕っているだけだ。

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2:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:00:49.94 ID:BVZ5thB50
夕暮れの陽光が照らす地学準備室。目の前に座る旧友、福部里志にそう反論した。

ホータローは高校で変わったね、などと聞き捨てならぬ発言をしたからだ。
 
「へぇ…じゃあホータローは取り繕ってるってわけかい」
以下略



3:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:02:10.21 ID:BVZ5thB50
すいません。忘れてました

注意!

便宜上、古典部にオリジナルキャラがいます。


4:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:03:02.60 ID:BVZ5thB50
男子にしては低身長なのと、ライトブラウンの髪、丸い瞳から、中性的な印象を受ける。

「俺は変わっちゃいないさ。何もかも、な」

俺の言葉に里志は肩をすくめた。
以下略



5:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:03:40.23 ID:BVZ5thB50
「福部先輩はどーなんですか?」

傍らに座っていた後輩、いずるが訊く。

「自分のことはわからないもんなんだよ」
以下略



6:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:04:22.97 ID:BVZ5thB50
「福部先輩はどーなんですか?」

傍らに座っていた後輩、いずるが訊く。

「自分のことはわからないもんなんだよ」
以下略



7:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:05:07.76 ID:BVZ5thB50
ふいにドアが開かれた。乱暴な。苛立ちをぶつけるかのような音が部室に響く。

「おまえたち、何をしている?」

初老の教師が大股開いてツカツカと歩みよってくる。
以下略



8:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:06:20.66 ID:BVZ5thB50
「知ってるさ福部、だがおまえは三年生のはずだろう。ここにいる必要はない」

「すみません。私が来るようにお願いしたんです」

いずるが立ち上がってこうべを垂れた。
以下略



9:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:06:51.98 ID:BVZ5thB50
「んー。なんとか騙せましたねー 教科書準備しててよかったー」

俺は別の個所が気になった。

「お前、教師にはきちんとした敬語なんだな」
以下略



10:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:08:13.14 ID:BVZ5thB50
三年時の文化祭はつつがなく終了した俺たちは

本来なら引退して家と学校の往復にいそしんでいなければならない。

それでも部室に入り浸れるのは、いずるに勉強を教えるという理由があるからだ。
以下略



11:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:08:54.86 ID:BVZ5thB50
「千反田先輩まだですかねー」

「何か用事でもあるのかい?」

「いえ。お菓子が食べたいので」
以下略



12:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:10:01.71 ID:BVZ5thB50
里志も携帯電話をいじくり始めたので俺はショルダーバッグから文庫本を取り出した。

草野球で無敵の主人公がプロ野球界に殴り込み、強打者達をクレバーな投球術で翻弄していく姿を描いたもの。

野球素人の俺から見てもかなり荒唐無稽な筋立てだが、これがすこぶる面白いのだ。


13:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:11:14.32 ID:BVZ5thB50
扉がゆっくりと遠慮がちに開く音が、沈黙を打ち破る。

「こんにちは。折木さん、福部さん、いずるさん」

言いながら、千反田えるが頭を下げる。
以下略



14:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:11:58.04 ID:BVZ5thB50
プライベートで出かけるときや部室の掃除といった限られた場面でしか見せなかったのだが

三年に進級してすぐの頃から、常時ポニーテールにするようになった。

まあ本人にも何か事情があるのだろう。俺は理由については突っつかなかった。
以下略



15:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:13:00.27 ID:BVZ5thB50
「どうしたんだい」

「あのですね。わたしから提案があるんです」

「ほうほう。それは」
以下略



16:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:13:44.69 ID:BVZ5thB50
バツが悪そうにして前を向く。
えー、めちゃくちゃ気になりますよー。とぼやくいずるに頭を下げた。

三年となれば、卒業後の進路選択を迫られる。

以下略



17:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:14:36.07 ID:BVZ5thB50
俺、里志、伊原は三人とも志望校は違うが、私立大学狙いなのは共通している。

古典部で最も学力的に問題があるのは里志だが、それはもう過去の話だ。

留年スレスレの低空飛行だった成績は、夏休み明け頃から急上昇し教師連中の腰を抜かせた。
以下略



18:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:15:16.75 ID:BVZ5thB50
が、同時に古典部の活動も終わる。浪費といっても良い日々。けれどそれなりに楽しんでいる。

いつからか、この放課後の地学講義室に居心地の良さを感じるようになっていた。

「あの、折木さん? なにか?」
以下略



19:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:16:27.48 ID:BVZ5thB50
それからどれくらい経っただろうか。読んでいた本が中ごろに入った時、伊原がやってきた。

無造作なショートカットだった髪型は

これも千反田と同じくして三年に上がった頃、変わった。
以下略



20:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:17:04.65 ID:BVZ5thB50
「ちーちゃん、どんな提案?」

千反田から改めて切り出されると、伊原が先に発言した。

いずるは待ってましたと言わんばかりに体が前のめっている。
以下略



21:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:18:21.07 ID:BVZ5thB50
伊原式あだ名命名法に従えば仙道をもじって、せんちゃんとなるはずだが

こといずるに限っては名前をもじる。

というのも、せんちゃんって仙人みたいで嫌です、と口をとがらせたからだ。
以下略



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