9:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:06:51.98 ID:BVZ5thB50
「んー。なんとか騙せましたねー 教科書準備しててよかったー」
俺は別の個所が気になった。
「お前、教師にはきちんとした敬語なんだな」
10:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:08:13.14 ID:BVZ5thB50
三年時の文化祭はつつがなく終了した俺たちは
本来なら引退して家と学校の往復にいそしんでいなければならない。
それでも部室に入り浸れるのは、いずるに勉強を教えるという理由があるからだ。
11:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:08:54.86 ID:BVZ5thB50
「千反田先輩まだですかねー」
「何か用事でもあるのかい?」
「いえ。お菓子が食べたいので」
12:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:10:01.71 ID:BVZ5thB50
里志も携帯電話をいじくり始めたので俺はショルダーバッグから文庫本を取り出した。
草野球で無敵の主人公がプロ野球界に殴り込み、強打者達をクレバーな投球術で翻弄していく姿を描いたもの。
野球素人の俺から見てもかなり荒唐無稽な筋立てだが、これがすこぶる面白いのだ。
13:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:11:14.32 ID:BVZ5thB50
扉がゆっくりと遠慮がちに開く音が、沈黙を打ち破る。
「こんにちは。折木さん、福部さん、いずるさん」
言いながら、千反田えるが頭を下げる。
14:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:11:58.04 ID:BVZ5thB50
プライベートで出かけるときや部室の掃除といった限られた場面でしか見せなかったのだが
三年に進級してすぐの頃から、常時ポニーテールにするようになった。
まあ本人にも何か事情があるのだろう。俺は理由については突っつかなかった。
15:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:13:00.27 ID:BVZ5thB50
「どうしたんだい」
「あのですね。わたしから提案があるんです」
「ほうほう。それは」
16:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:13:44.69 ID:BVZ5thB50
バツが悪そうにして前を向く。
えー、めちゃくちゃ気になりますよー。とぼやくいずるに頭を下げた。
三年となれば、卒業後の進路選択を迫られる。
17:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:14:36.07 ID:BVZ5thB50
俺、里志、伊原は三人とも志望校は違うが、私立大学狙いなのは共通している。
古典部で最も学力的に問題があるのは里志だが、それはもう過去の話だ。
留年スレスレの低空飛行だった成績は、夏休み明け頃から急上昇し教師連中の腰を抜かせた。
18:名無しNIPPER
2015/06/29(月) 10:15:16.75 ID:BVZ5thB50
が、同時に古典部の活動も終わる。浪費といっても良い日々。けれどそれなりに楽しんでいる。
いつからか、この放課後の地学講義室に居心地の良さを感じるようになっていた。
「あの、折木さん? なにか?」
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