過去ログ - 北条加蓮「シンデレラ前夜」
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1:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:38:18.31 ID:pES0toMOO
私がアイドルか。神様に感謝しなきゃいけないのかな。

少し昔の事を思い出す。





校庭で鬼ごっこをしている。

私が鬼だ。皆が逃げていく。

「いーち、にー、さーん、しー…」

十秒数えて私は周りを見渡す。

逃げていくみんなの背中が見える。

私は駆けだす。私の足は元気よく前に進む。

あと少し、あと少しであの子に追いつける。

精一杯右手を伸ばす。あと少し!右手を振りかぶる。

でもその右手は虚しく空を切る。


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2:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:38:53.14 ID:pES0toMOO
力強く進んでいた足は泥のように崩れ、
それまでスムーズだった呼吸が苦しくなる。

私は必死に右手を伸ばす。でもどこにも届かない。

以下略



3:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:39:26.08 ID:pES0toMOO
そうして私は目を覚ます。

鼻を突く消毒液の匂いが一瞬で私を現実の、病院の一室に引き戻す。

咳が止まらない。悪夢の原因はこれのせいだろう。
以下略



4:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:39:55.71 ID:pES0toMOO
白い天井、消毒液の匂いで満たされた部屋、隣のベッドから聞こえてくるすすり泣き。

私の日常はこの小さくて偏った病院の一室だけ。

神様はみんなに平等じゃないの?なんで私だけが辛い思いをしなきゃいけないの?
以下略



5:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:40:35.94 ID:pES0toMOO
そんな私を支えてくれるものがあった。私の世界を広げてくれるものがあった。

小さい備え付けのテレビ。

バラエティーもアニメも、映画もドラマも、移り変わる光景に私は心奪われる。
以下略



6:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:41:08.32 ID:pES0toMOO
「お母さん!私大きくなったらアイドルになる!」

お母さんはその言葉を聞いてどう思ったのだろう。

強く抱きしめられ、ごめんねと頭を撫でられる。
以下略



7:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:41:38.05 ID:pES0toMOO
色んな人が私に可哀想だと声をかけてくれる。

あれも出来ない。これも出来ない。無理をさせてはいけない。

私は小さいころから「無理」と言う言葉を積み重ねていくしかない。
以下略



8:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:42:08.05 ID:pES0toMOO
小さいころから少し達観していた部分はあった。

捻くれている訳じゃないけど、出来ないことばかりだし、
無理なんだと割り切る性格がそうさせてしまっているんだと思う。

以下略



9:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:42:36.54 ID:pES0toMOO
「加蓮聞いた!?」

「なにー?」

「同じ中学だった渋谷凛って子覚えてる!?」
以下略



10:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:43:24.06 ID:pES0toMOO
彼女の話はあまり頭に入ってこなかった。

渋谷凛、知っているぐらいの子だった。

特に目立った噂は聞かなかったけれど、少し大人びていて、静かな子だった印象ぐらいだ。
以下略



11:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:43:58.38 ID:pES0toMOO
久しぶりに音楽情報を漁ってみる。

『渋谷凛』

そのワードを探してみる。少し話題になっていたみたい。
以下略



12:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:44:38.58 ID:pES0toMOO
正直、羨ましいと思った。
何で私じゃないんだろうって、胸がむかむかした。

でも、私には無理なんだって。出来ない人間なんだって。
そうやってこの胸の不快感を消化しなければ。
以下略



13:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:45:21.51 ID:pES0toMOO
春が終わりを迎え、夏の暑さを迎える少し前、
ミントの花が咲き始めて、その葉の匂いに心落ち着かせる。



以下略



14:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:46:10.45 ID:pES0toMOO
「アイドルに興味はありませんか?」

低く響く声よりも、その大男から発せられた言葉の内容に、胸がざわめきたつ。

「アンタがアタシをアイドルにしてくれるの?」
以下略



15:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:46:45.85 ID:pES0toMOO
一歩ずつ。私に出来るだろうか。

私は一歩目を踏み出すことが「無理」だと思って今まで生きてきたから。

「…少し考えさせて」
以下略



16:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:47:24.49 ID:pES0toMOO
神様は少しだけ私にいい思いをさせてくれようと、
辛い思いや、苦しい思いをした日々から救ってくれようとしているのだろうか。

別に、誰かに救ってもらいたかったわけじゃない。

以下略



17:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:48:03.53 ID:pES0toMOO
私がアイドル。


昔、目を背けて見ないようにしていた夢が、小さいころに思い描いていた夢が叶った。

以下略



18:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/16(木) 23:52:39.55 ID:79CJUORsO
おわりん



ぷち加蓮のエピソード見てたら書きたくなった。
以下略



19:名無しNIPPER[sage]
2015/07/17(金) 00:31:10.92 ID:jJ+F9iCCO
最後の行で背筋にザワッときた

アニメ二期も波乱は避けられないのか
おつ


20:名無しNIPPER[sage]
2015/07/17(金) 01:09:22.84 ID:mzs2ckzsO



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