過去ログ - 藍子「ある日の昼下がり」
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6: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/05/06(金) 19:09:04.27 ID:J9K9lNQH0

「はぁ〜〜…………」

 美穂ちゃんが大きく息を吐いてソファに埋まるのと同時に、きゅう、とかわいらしい音が聞こえた。

「そ、その生温かい目で見るのはやめて〜」

 気が抜けたせいでお腹が鳴ってしまったみたい。

「もうお昼だもんね。先にごはんにしよっか」

「あ、じゃあ私がつくるよ!」

 卯月ちゃんが身を乗り出して挙手をした。

「ここで? ちなみに、なににするの?」

「ぺ ぺ ロ ン で す !」

「あ、うん」

 知ってた。
 そう思った時には、卯月ちゃんは跳ねるようにソファから降りて給湯室に向かっていた。

「パスタとニンニクとオリーブオイルと唐辛子と――」

 ごそごそと棚や冷蔵庫を漁っている。
 そのうち鼻歌でも聞こえてきそうなくらいに上機嫌だ。

「久しぶりに僕がつくるよ♪ 何が食べたい?」

 訂正。もう歌ってた。

「僕はいつもペペロンチーノ♪」

 ペペロンチーノの歌かなにかだろうか。
 こうなったら卯月ちゃんは完成するまで出てこないだろうし、今日のお昼のメニューは決まりかな。

「卯月ちゃん張り切ってるね……ちょっとかかるけど、美穂ちゃんは大丈夫?」

「私は大丈夫。まだ我慢できないってほどじゃないし。だけど……」

 美穂ちゃんが給湯室の方に視線を向ける。

「おいしさを知ってるだけに、匂いがつらいかな」

「ああ、途中からいろいろと炒めたりするから……」

 たしかに、お腹が空いてるときにおいしそうな匂いを嗅ぎながら待ってるのはつらいものだ。
 自分でつくるなら、適当に手早く済ませてしまうんだけど。

「待ってる間になにか食べちゃうのももったいないし」

「そうだよね……よし、美穂ちゃん! 頑張って!」

「え、応援するだけ?」

「私はまだ耐えられるから」

 美穂ちゃんより朝ごはんが遅かったと思うし。
 うん、私の方はちょうどいいくらい。

「藍子ちゃんも一緒に頑張ろうよ! ほら、オリーブオイルの香りが――」

「きーこーえーまーせーんー!」

「藍子ちゃんも思い浮かべるの! 卯月ちゃんのペペロンチーノを! ほらっ!」

 耳を塞いでいる手を掴まれて、攻防が始まる。
 動くと余計にお腹が空きそうだし、美穂ちゃんが自分の言葉で自滅していってる気がするんだけど……いいのかな、これ?



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