過去ログ - 「路地裏で猫を撫でたら、不思議な場所へ着いた」
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12:名無しNIPPER[sage saga]
2016/05/16(月) 23:39:14.59 ID:mW051LL10

タップリの案内でクリーム木星町にやって来た二人は、彼の馴染みの店があるという商店街まで足を運んだ。
身体を包み込む金木犀の花の香りがなんとも心地よい。

辺りの木々には薄い黄色の花が小さく咲き乱れている。

小さい頃に祖母の家の庭で嗅いだのを最後に、随分とご無沙汰していた。
新宿では縁のなかった香りが懐かしく、カノンは胸いっぱいに吸い込んだ。


「昔嗅いだ金木犀より、優しい匂いがする……」

「ここの金木犀はクリーム木犀という種類で、花は橙じゃなくてクリーム色なんじゃよ。季節も金木犀とは反対に春咲きの花じゃ」


タップリ達の住む『風の分岐点』という町は、深い『森』に覆われた町だったが、この町は反対に『市街地』だった。
道はきちんと舗装され、植えられた街路樹は先ほどから香るクリーム木犀である。


「不思議な町……」


カノンはぽつりと呟いた。
道の行きつく先に建てられた家々は、お茶碗をすっぽりと地面にかぶせたようなドーム型で、クリーム色の外壁に様々な色の屋根が乗っている。

行き交う人々は多くが猫。
ローブを被っているのも、今風なファッションの女の子も、パリッとしたスーツを着こなしたダンディも、皆猫。

ローブに耳用の穴が開いていたり、尻尾用に後ろに切れ込みが入っているのには感心した。


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