過去ログ - 結城晴「文香の怪奇帳・あいくるしい」
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◆ty.IaxZULXr/
[saga]
2016/05/16(月) 21:48:55.32 ID:6H0Qx0cE0
序
臆病な私の手を、あなたは引いてくれた。
あなたは、子供の小さな世界を広げてくれた。
太陽のように朗らかな、あなた。
優しい、あなた。
将来の夢を語る、あなた。
誰かの味方になりたい、あなた。
あいくるしい、あなた。
あなたへの気持ちが何かを知るには、出会った頃は幼過ぎました。
あなたのおかげで、私は変わりました。
あなたが連れて行ってくれた場所が、私の大切な場所になりました。
あなたが語った夢が、私の夢にもなりました。
あなたが進んだ道を、私も歩きたいと思いました。
あなたの背中を見ながら、ずっとずっと歩いてきました。
月日は経って、私はあなたよりも背が高くなって。
離れた時もあったけれど、今はあなたの近くにいられます。
あなたの夢の途中を、傍で見ていられます。
そして、私はあなたへの気持ちの正体を知ることが出来ました。
でも。
知ってしまったから、私はこの気持ちを伝えられません。
この気持ちは、あなたの夢には……悪いものだから。
本当のことなんて、言えません。
私は、あなたのために言えない。
あなたの夢のために、言えません。
あなたの夢は私の夢でもあるから、伝えられません。
伝えても、楽になるのは私だけ。
本当の自分をさらけ出せないのは、辛いけれど。
あなたに届かない場所で、気持ちの吐露をして、自分と折り合いをつけて。
私は、平気です。
あなたが笑顔なら、笑っていられます。
優しいあなたは、きっとわかってくれるから。
きっと、私の立場になって考えてくれる。
いつも通り、笑ってくれる。
だから、言っちゃいけないんです。
だって。
だって、あいしてるから。
あいしてるから……くるしい。
序 了
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