1: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/06/25(土) 21:58:08.72 ID:9gikU85z0
モバマスss
書き溜め有り
地の文有り
乱文乱筆等、どうかご容赦ください
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2: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/06/25(土) 21:58:44.98 ID:9gikU85z0
本作品に登場する商品はすべて、実在のものとは関係ありません。
3: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/06/25(土) 22:00:15.13 ID:9gikU85z0
楓「ただいま戻りました」
その日、高垣楓がドラマの撮影を終えて事務所に帰りついたのは、午後七時を回ろうかというころだった。
あとは仕事の報告と次の自分の予定を確認すれば、彼女のアイドルとしての一日は終わりを告げる。
4: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/06/25(土) 22:02:14.30 ID:9gikU85z0
P「お疲れさまです。意外に遅かったですね」
パソコンとにらめっこをしながら、プロデューサーが声を投げる。
楓「お疲れさまです、少し撮影が長引きまして。……えっと、他の皆さんは?」
5: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/06/25(土) 22:04:17.15 ID:9gikU85z0
楓「じゃあ、夕飯はどうされるんです? もう食べたとか?」
楓はプロデューサーのデスクの周りをあてどなく歩きまわる。
キーボードを打つ手を止めて、プロデューサーは、
6: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/06/25(土) 22:05:44.94 ID:9gikU85z0
楓「じゃあ……ついでにちょっと一杯ひっかけませんか?」
P「これから残業なんだから駄目に決まってるでしょうが」
7: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/06/25(土) 22:07:41.48 ID:9gikU85z0
しかしプロデューサーも、口ではそう言いつつも、怒っている様子はなかった。
むしろ名残惜しげな気配さえ、漂わせている。
そんなプロデューサーの様子を察した楓は、考えを巡らせた。
8: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/06/25(土) 22:09:42.26 ID:9gikU85z0
楓「ねえ、プロデューサーさん?」
白く長い指を絡ませて、ものをねだるような表情を浮かべて、楓がプロデューサーの顔を覗き込む。
9: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/06/25(土) 22:11:30.18 ID:9gikU85z0
プロデューサーは一度なるほど、と頷いて、
P「いいですね、どこに食べに行きます?」
10: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/06/25(土) 22:13:02.17 ID:9gikU85z0
楓「夕ご飯なら、もう買ってあるじゃないですか」
P「え、ああ……そういうことですか」
11: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/06/25(土) 22:14:42.23 ID:9gikU85z0
P「夕飯というよりは間食と呼んだ方がしっくりくるメニューですが……」
楓「じゃあ間食を完食しちゃいましょう!」
P「……あなたは、まがいなりにもアイドルなんですが」
12: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/06/25(土) 22:20:57.15 ID:9gikU85z0
やがて根負けしたように、プロデューサーが苦笑した。
P「楓さんがそう言うなら、一緒に食べますか」
13: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/06/25(土) 22:23:45.22 ID:9gikU85z0
P「じゃあ、キリのいいところまで仕事進めちゃいます」
楓「なら私は二人分のお湯沸かしてきますね」
P「お願いします」
14: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/06/25(土) 22:25:53.18 ID:9gikU85z0
たっぷりの水が沸騰したことを確認してコンロの火を消し止め、楓は事務所に戻った。
ちょうど仕事に区切りをつけたらしいプロデューサーが、戸棚からカップ焼きそばを取り出すところだった。
15: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/06/25(土) 22:27:10.74 ID:9gikU85z0
P「カップ焼きそば、なにを買ったか、でしたよね」
一頻り笑い終えた後で、プロデューサーが口を開く。
たったの、一言。
16: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/06/25(土) 22:27:46.10 ID:9gikU85z0
ただそれだけの、なんでもない言葉。
しかしその言葉が、これから始まろうとしている騒動の契機になった。
17: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/06/25(土) 22:29:05.22 ID:9gikU85z0
プロデューサーのその言葉を受けて、楓の表情に、微かに陰が差したことに、プロデューサーは気付かなかった。
そして楓自身、なぜ自分その言葉から不穏な気配を嗅ぎ取ったのかがわからないままでいた。
18: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/06/25(土) 22:30:11.38 ID:9gikU85z0
楓は僅かに一歩、後ずさる。
なんら警戒することなど、ないというのに。
先ほどから彼女の勘が、警鐘を鳴らし続けている。
19: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/06/25(土) 22:31:18.64 ID:9gikU85z0
楓「……ペヤング」
それは、彼女の声にしてはあまりにも底冷えするような響きがあった。
20: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/06/25(土) 22:33:14.19 ID:9gikU85z0
P「いやあ、カップ焼きそばといったら、これでしょう」
P「さっき近くのコンビニに買いに行ったら売り切れてたんですよ」
P「だからちょっと遠くのスーパーまで行く羽目になってしまったんです」
21: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/06/25(土) 22:34:36.81 ID:9gikU85z0
楓「残念です」
冷ややかでいて、棘のあるトーン。
それは、井戸に毒を垂らすように、静かな声だった。
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