過去ログ - 【ガルパンSS】西住隊長は天才だから!凡人の気持ちなんてわかるわけがないですよ!
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10:名無しNIPPER[saga]
2016/10/02(日) 22:55:38.74 ID:hsNhL/EX0
強い日差しに、歩きながら手をかざして上を見る。
空には雲一つなく、絶好の戦車道日和だ、と思った自分に、戦車道日和ってなによ。と突っ込みを入れる。

審判の人達がいる戦場の中央に到着して足を止める。前を向くと黒いパンツァージャケットを身にまとった西住先輩がいた。

お互い歩み寄り、握手を交わす。

「今日は、練習試合を受けていただいて、ありがとうございます。」

間近で見て、やっぱり戦場でのこの人はかっこいいな、何て思ってしまう。

「かわいい後輩のお願いだもん。それに私も、ずっとこうやって大洗と試合をしてみたいって思っていたの。」

つないだ手から伝わってくるその力強さに、思わず背中に震えが走る。

彼女の向こう、ずらりと並ぶ西住先輩の大学のチームは、そのままのメンバーで大学選抜といって遜色がない練度だと、
そう何かの記事で読んだことを思い出す。

実力差は歴然。何もできずに連敗記録が一つ増えてしまうのかもしれない。
でも。

「今日は、ただやられるつもりはありませんから。」

今は楽しみでどうしようもない。どんな隊列で、どんな作戦で西住先輩は来るのだろう。
そして、私たちはどうやってそれに立ち向かおうか。上手くいくだろうか。失敗してしまうだろうか。
怖くて、緊張して、でもわくわくして仕方がない。

「…! 私も。楽しみだよ。」

少し面食らったような顔をしたが、すぐに笑みを浮かべる西住先輩。

手を放してまた距離を開けると、主審から今日の練習試合の開始が宣言された。

そのまま自分のチームの隊列に戻ると、すでに戦車のエンジン音が鳴り響いており、試合の準備は万全のようだ。

私のW号戦車は、とあたりを見渡すと、すぐ目の前をそのW号戦車が通り過ぎる。

「え!?え!?」

困惑して、キューポラから出ている顔を見ると、例の期待の一年生。
彼女は、にやっといたずらな笑みを浮かべるとそのまま走り去ってしまう。

訳が分からずおろおろしていると、後ろから戦車が近づいてくる音がする。

(あ。)

振り返って見なくても。そのキャタピラ音で。そのエンジン音で。何の機体なのかすぐにわかる。
だって、初めて乗った戦車で、ずっと乗っていた戦車で、大切な仲間と乗っていた戦車だから。

M3中戦車リー。

振り向いた私の前に停車すると、顔を出したみんなが声をかけてくる。

「遅いよ。梓ちゃん。」

「重戦車キラー、復活!」

「早く早く。」

「今日もやったるぞー!」

「ちょうちょ。」

何も変わらないみんなに、思わず吹き出してしまう。

戦車のふちに足をかけると、するするとよじ登る。この機体に乗り込むのは久しぶりなのに、登り方を体が覚えている。それがなんだかうれしかった。

ヘッドセットをつけると、感触を確かめるようにおずおずと車長席に座る。
そんな私を見る、みんなの笑顔を見渡して。

「それでは、行動を開始します。パンツァーフォー!」

動き出した戦車の振動を感じて。あぁ、今日は戦車道日和だな、と私はまた思ってしまった。


<了>


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