過去ログ - 【ガルパンSS】西住隊長は天才だから!凡人の気持ちなんてわかるわけがないですよ!
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名無しNIPPER
[saga]
2016/10/02(日) 21:53:24.65 ID:hsNhL/EX0
大洗女子学園、といえば今ではもう戦車道の強豪校というイメージが世間に広く定着している。
長年廃部となっていた学校が、新造チームで初参加初優勝。大学選抜を打ち破り、続く次年の全国大会でも
優勝して連覇を果たした。
強豪校、と言われるにふさわしい輝かしい実績。
他の強豪校とも交友が深く、先の対大学選抜戦での高校連合は、今でも語り草だ。
でも、これからはそのイメージもどんどん崩れていくのではないか、と自嘲ぎみに思う。
新チームとなってから公式戦の経験はないものの、練習試合は連戦連敗。イメージが悪くなるには、十分な”実績”だ。
連敗の理由はわかっている。
公式・練習含めて大洗女子学園が最後に試合に勝ったのは、昨年の全国大会決勝。
あの人、西住隊長が最後に指揮を取ったあの試合まで。
そう。敗戦の理由はわかっているのだ。はっきりと。
やめてしまおうか、他の人に隊長を譲ってしまおうか、と思ったことは数え切れないほどあった。
幸い去年、今年と戦車道経験者が複数人入部してくれたこともあり、層の厚さは2年前とは比べ物にならない。
今年は中学戦車道で名を馳せた有望株も入学し、1年生ながら車長として活躍している。
彼女は私なんかよりよっぽど、ずっとうまくみんなを指揮できるに違いない。
でも、それでも今まで隊長を続けていたのは、受け継いだからだ。
ポケットの中に入れた隊長腕章をギュッと握りしめる。
『澤さんがどんなチームを作って、どんな戦車道を見つけてくれるのか、楽しみにしてるね。』
想いも、あの人から受け継いだと思っていたからだ。
でも、もうそんな形のないものだけを頼りに頑張り続けるのは限界なのかもしれない。
高校から戦車道を始めた私は、経験が圧倒的に足りなかった。
だから、西住隊長から隊長を引き継いだ当時は気づけていなかったのだろう。
座学に取り組み、練習試合を重ね、しかし自分のスキルが磨かれれば磨かれるほど、彼女の天才性が、
自分との埋めがたい差が、はっきりと見えてきてしまう。
まるで空から見ているかのような戦場把握能力。相手の出方をぴたりとあてる先読み。
虚を突き圧倒的不利を覆す、奇抜なアイデア力。
どれもが私には欠けており、どれだけ努力したところで到底追いつけるものではないと日々自覚させられている。
「梓ちゃん?」
声をかけられ、ハッと我に返る。
一瞬、自分がどこに立っているのか、分からずに焦る。
周囲を見渡し、ここが戦車車庫の前だということに思考が至り、目の前に整列する戦車道メンバーを見て、状況に頭が追いつく。
「大丈夫?」
横ではあゆみちゃんが心配そうにこちらの表情をのぞき込んでいる。
「大丈夫です。副隊長。」
こほん、と咳払い。
浅くなった呼吸を整え、メンバーを見渡す。
「それでは、今日の練習を始めます。みなさん、戦車に乗り込んでください。」
はいっ、という返事とともに、皆各々の戦車に向かってかけていく。
「梓ちゃ、隊長、本当に大丈夫?」
「ありがと。でも本当に大丈夫。ほら、みんな待ってるよ。車長が早く行ってあげないと!」
まだ心配そうにこちらを見るあゆみちゃんを送り出し、私も自分の戦車に向かっていく。
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