20: ◆zPnN5fOydI
2016/10/30(日) 14:50:13.52 ID:JntGMmXe0
「司令官、ここに何があるの?」
大潮が尋ねるが、提督は下を俯き、無言のまま。そこに明石が、大潮に耳打ちする。
「朝潮ちゃんの・・・うっ・・・うっ」
明石はこみ上げる涙を止めることができなかった。こらえていた提督も、明石に誘われ、感情を全開にして、泣きだした。
「・・・ここはな・・・あさっ・・・朝潮の・・・回天の基地だ・・・」
提督は辛うじて言い切ると、首をこれでもかと下に向け、目をきつく瞑り、歯を食いしばり、手を震わせて泣き出す。
提督と明石のすすり泣きが、静寂の空間に響き渡る。
朝潮が特攻をした場所。
回天を沈め、そこに乗り込み、深海棲艦の巣を目指して突撃する。
いわば、朝潮のこの世との別れとなった場所。
提督は溢れる感情を必死に抑え、目を見開き海の方を向き、敬礼をした。
明石、姉妹もそれに続く。
暗闇の中で、穏やかな水面が僅かな光を得てキラキラと輝いている。
当時の朝潮の面影が、目の前の海に重なった。
提督、明石、朝潮型姉妹。各々の思いを胸に抱き、各々の気が済むまで、海に向かって敬礼をした。
その後は全てが、なるように、自然に物事は動く。
関係者にとっては一大事件。他人にとってはなんともない日々。
全てが元あった生活に吸収されていく。事件といっても、実態はもう何年も過去のもの。
日常というものは強力なもので、外から見ればなんの変哲もない。
しかし、彼ら彼女らの中では、亡き姉朝潮の存在というものが、心の奥底でゆっくりと波を打ち、
それはまた、人を変えていった。
ここで、朝潮の特攻するときの最後の思いを反芻しよう。
皆さんの未来に、幸がありますように。
-FIN
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